札幌地裁R8.4.21
土木工事会社の支店長が退職し、翌日から同業他社の取締役に就任。
会社の就業規則では、退職後1年間の同業で就業禁止が定められていた。
また、在職中に知り得た顧客との接触を禁止する規定もおかれ、これには期間の限定が定められていなかった。
会社はこの元支店長がこれらの義務規定に違反したとして損害賠償請求訴訟を提起 →会社が退職後の競業避止義務を定める目的は、在職中に知り得た顧客情報や人的関係等を利用し、顧客の奪取行為のような不正競争を企てることを防止することにあると認められるから、目的は正当である。
もっとも、元支店長は、40年以上にわたり建設業にたずさわり、その収入を生活の糧としてきたのであり、年額1000万円以上の給与の支払を受けていたことからすると、退職後競業避止義務を課すためには、相当の代償措置を講じる必要がある。
しかし、元支店長は、会社から退職金は受領しておらず、その他、退職後に競業避止義務を負うことに対する代償措置と評価できる利益を得たことを示す証拠はない。
また、同業での就業禁止については、退職後1年間と一応期間の制限がされているものの、会社顧客との接触禁止については期間に制限はない。これらの規定が会社の営業圏内での再就職を著しく困難にする規定であるというべきことからすると、その相当性については慎重な判断を要する。
元支店長が退職後に会社に対して同業での就業避止、会社顧客との接触避止の義務を負うとは言えないと判断
企業側から見たポイント
自社の経営幹部が競合他社に転職すると、自社の経営上の機密を競合他社に知られることになります。あわせて在職中に知った顧客情報や在職中の人的関係等を利用した顧客の奪取行為が行われる危険もあります。
これを防ぐために、幹部社員について退職後も一定期間、競合他社への就職を禁止することについては、裁判例でもその目的自体は正当とされています。
ただし、特に競合他社への就職禁止は退職者にとって非常に強い制約になるため、単にその期間や範囲を絞るだけでは足りず、代償措置が必要であるとするのが一般的な考え方です。
ポストの裁判例の事案でも、特別退職金の支給など代償措置をとるべきだったと言えるでしょう。
過去に、同様の事案で代償措置がなくても競業避止義務の効力を認めた例として東京地裁H19.4.24がありますが、一般的な考え方とは言えないように思います。






