判例・裁判例コラム

「勤務態度が悪いから配置転換」は通用しない?証拠がなく会社敗訴となった裁判例

大阪地裁R8.2.10
土木工事会社が取引先へのコンプライアンス通報をした技術者を現場事務所から技術部に配置転換
→就業規則には、会社は業務上必要と認められる場合、社員に異動を命ずることがある旨の定めがある。
しかし、会社は、従業員が所在不明となる、内勤でも現場でも業務をしない、ルールを守らない、非協力的であり積極性がないなど、勤務態度に問題があったことから、配転命令に及んだと主張するが、これらを認めるに足りる証拠は何ら提出されていない。
したがって、本件配転命令について業務上の必要があったとは認められないから、違法・無効である。
会社に慰謝料5万円の賠償命令
※なお、従業員は、取引先がコンプライアンス通報への報復として、会社に配置転換を働き掛けたとも主張しましたが、これは、証拠不足として退けられました。

企業側から見たポイント
企業による転勤命令権も無制限ではなく、業務上の必要性がない転勤命令は許されません。
ただ、ここで求められる「業務上の必要性」については、最高裁が、「高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべき」としているところです(東亜ペイント事件最高裁判決)。
そのような中、ポストの裁判例は、勤務態度不良等を理由とする配転命令について、勤務態度不良等を示す証拠がないことを理由に違法・無効としている点が注目されます。
この判決と同様の考え方がどこまで採用されるかはわかりませんが、
・問題行動があった都度、注意指導書・始末書・業務日報・メールなどで同時進行的に記録化しておく
・従業員の意向に反するような配転を検討する場合は、その理由となる事実を裏付ける証拠を整理してから発令する
といったことが必要といえるでしょう。

アスペルガー症候群に由来すると思われる問題行動を理由とする解雇前のページ

ドライバーに売上の15%を支払う歩合給。売上は会社が決定するから出来高払制賃金にあたらない?札幌地裁の判断!次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    教師が生徒からチョコレートをもらうことは懲戒事由?

    東京地裁H23.4.15私立の中学・高校の社会科教師が①生徒からバレ…

  2. 判例・裁判例コラム

    社員が弁護士をつけた後も本人を指導できる?東京地裁の結論!

    東京地裁R7.11.17 上司に対して「圧倒的な能力不足」「取締役に…

  3. 判例・裁判例コラム

    賃金規程に基づいてした給与等級引き下げの効力について判断された事例

    東京高裁H19.2.22年功型賃金から成果主義賃金への変更にあたり、…

  4. 判例・裁判例コラム

    先輩看護師の新人看護師に対する「人間的に無理」という発言はパワハラ?

    東京地裁H28.10.7看護科の看護師が、本来別の科が行うべき心電図…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    “経験3年のSE”で採用したのに電卓アプリも作れない…試用期間中の解雇は有効?裁…
  2. 判例・裁判例コラム

    入社前日の電話で内定が取消しに! それでも「有効」とされた理由とは?
  3. 判例・裁判例コラム

    労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例
  4. 判例・裁判例コラム

    退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力
  5. 判例・裁判例コラム

    適応障害による休職者の復職可否判断
PAGE TOP