大阪地裁R8.4.27
令和5年設立の会社が、昭和に設立された別会社の事業を承継。この会社の全従業員を以前と同じ労働条件で引き継いだ。
その後に退職した従業員の1人が、退職にあたり、会社の情報をUSBメモリに複製して、社外に持ち出して転職。会社は、この従業員について、退職金不支給事由があったと判断して退職金を不支給とした。
しかし、従業員は、退職金不支給条項を定めた就業規則は周知されておらず、会社は退職金不支給条項を適用できないと主張した
→会社は、退職金不支給条項を定めた本件就業規則が承継前の旧会社で周知されていたと主張する。
しかし、会社は、本件就業規則がいつどのように旧会社で周知されたかを具体的に主張しておらず、旧会社で周知されていたことを的確に裏付ける証拠は見当たらない。
かえって、旧会社の代表者は、旧会社で適用していたのは別の就業規則であるとする陳述書を提出しており、また、旧会社から勤務していた従業員は、旧会社時代も含め、在職中に就業規則を見たことはなく、就業規則がどこに保管されているかも知らなかったと述べている。 会社は、事業承継時に旧会社が仲介会社に対して旧会社で適用されている就業規則として本件就業規則を開示したと主張する。しかし、そのような経過があったとしても、それは旧会社の認識を裏付けるにとどまる。そのことによって、本件就業規則が旧会社において周知されていた事実までもが推認されるわけではない。
以上によれば、本件就業規則が旧会社及び承継会社において周知されていたと認めることはできず、会社は退職金不支給条項は適用できないと判断。退職金支払い命令。
企業側から見たポイント
本件のような事業承継では、承継する会社の就業規則の存在を確認するだけでは対応として不十分です。
旧会社での就業規則の周知性が否定される場面に備え、承継にあたり、改めて就業規則を周知する必要があります。
旧会社と同じ就業規則を使うのであれば、それを改めて周知すればよいですが、承継を機に就業規則の内容を見直し、必要な改訂をしたうえで周知することが通常は適切です。





