大阪地裁決定H21.5.15
外食フランチャイズ企業で店主代行として店舗で勤務していた従業員が重症筋無力症と診断された。
手術を受けたが、治癒に至らず。 主治医は「通常勤務可能。もちろん無理はしないほうが良い」と判断。
産業医は「就業可能だが制限は必要。その内容としては通勤時間の配慮、就業時間の短縮、軽作業に留めるといった内容が適当。徐々に負荷をかけ、制限を解除していく方法が適当」と判断。
就業規則には「心身上の理由があり会社が一定の保護を必要と認めた場合、職種変更・就業制限・治療命令等も含めた就業上・衛生上の必要な措置を取る」との規定あり。
会社は、従業員の原職は、長時間にわたり熱くて重量のある丼物やうどんを顧客に配膳する業務があり、重症筋無力症の症状は、午後から夕方にかけて筋力低下が強くなるから、勤務が困難であると判断。
就業規則の規定に基づき、この従業員にパートタイマーへの身分変更を通知した。
契約変更によって、従業員の給与は月約41万円から月7万円前後に減額された。
従業員は変更は無効であるとして、正社員としての地位にあることの確認等を求めた。
→会社には内勤業務も存在することもうかがわれるし、従業員はその業務の経験もあり、体調と生活に配慮し、原職以外のより負荷の少ない業務に従事させることも可能。
そうすると、重たく熱い丼ものを取り落として来店客を負傷させるといった事態や、長時間の肉体労働による疲労で再度、重症筋無力症の症状が生ずる等の事態は、必ずしも念頭に置く必要がない。
原職への復帰が適当でない可能性はあるにしても、会社において正社員に期待される通常業務に従事できないとまではいえない。
従業員が正社員たる労働契約上の権利を有する地位を有し、月例賃金の債権を有することについて、一応の疎明があったものと認められると判断。
企業側から見たポイント
「原職に戻せない」=「正社員として働けない」ではありません。
本件では、従業員の原職である店舗店主業務は、肉体労働を含み、長時間勤務もあるかなり負荷の高い仕事でした。
それでも、
原職復帰が困難
→ 正社員として勤務できない
→ パートに変更してよい
ということにはなりません。
会社にはフード事業本部の内勤業務もあり、本人にもその経験があったため、裁判所は、正社員のまま、より負荷の少ない仕事に配置することが可能だったと評価しています。
雇用契約において職種が限定されておらず、さまざまな職種への配置転換が就業規則上予定されている場合、企業としては、「元の仕事ができるか」だけでなく、「正社員のまま担当可能な別の業務がないか」まで検討することが求められます。
なお、裁判所は、使用者として労働契約の範囲内で自由に指揮命令できる以上、「原職への復帰を命じることができないのであれば、そもそも労働契約上求められる労働に耐えられない状態である」との考え方もあり得るとしつつ、これを採用しませんでした。
その理由として、労働契約は仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結・変更すべきものであること(労働契約法3条3項)や、継続的な法律関係であり、生身の人間である労働者の労働力を使用する労働契約においては、健康状態の変動によって使用者の期待する水準の労務提供ができなくなることも、当事者双方が想定しているはずであることを挙げています。





