大阪地裁R8.3.19
鉄道会社の従業員が60歳で定年退職後、シニア社員制度(1年更新、65歳まで)により再雇用されていた。
会社はシニア社員の契約満了後さらに最大5年間、1年ごとの有期契約で再雇用するグランドシニア社員制度を導入し、心身の健康・意欲、業務知識・経験の豊富さ、指定業務への従事可能性という基準を満たす者を対象とした。
従業員は65歳でグランドシニア社員として再雇用を申請したが、会社はこれを拒否したため、従業員が会社に訴訟提起。
→シニア社員制度による契約更新は65歳が上限とされ、グランドシニア社員制度はこれとは別個の雇用制度であって、グランドシニア社員制度に応募した労働者を新たに再雇用する制度だから、雇止め法理(労働契約法19条2号)を直接適用することはできない。
しかし、本件会社におけるシニア社員制度とグランドシニア社員制度は、いずれも定年退職した者との間で有期労働契約を締結・更新する継続雇用制度であり、両制度による労働契約期間は連続し、労働条件も共通している。
このようなグランドシニア社員制度による再雇用契約の締結に対する合理的期待がある場合には、雇止め法理が適用される場面と利益状況が共通しているから、雇止め法理の類推適用により、グランドシニア社員制度に基づく労働契約が成立すると解するのが相当である。
この点、本件会社のグランドシニア社員制度の適用にあたっては、ICT技術等の進展に対応することができる能力や意欲が重視されていること、これまでの業務を通じて培った知識や経験が豊富であり、これを後輩に伝えるために指導・育成ができる人材であることが必要であることなどを認めることができ、希望者全員を採用するものではなく、採用率も7割弱にとどまっている。
本件従業員が従事していた作業は、単純な電話番号の打ち込み作業等であり、グランドシニア社員制度により再雇用されると期待することについて合理的な理由があると認めることは困難である。
従業員の請求認めず。
企業側から見たポイント
本判決で注意すべきなのは、65歳までとは別の制度として65歳以降の再雇用制度を設けていたとしても、会社が自由に再雇用の可否を決められるとは限らないとされた点です。
本判決は、65歳までの再雇用と65歳以降の再雇用について、制度上は別個のものであるとして、労働契約法19条の雇止め法理の直接適用を否定しました。しかし、両制度による雇用期間が連続し、労働条件も共通していることなどから、65歳以降も再雇用されることについて合理的な期待が認められる場合には、雇止め法理が類推適用されると判断しています。
65歳以降の雇用について、それ以前と雇用期間が連続し、労働条件も共通するような制度を設ける場合は、具体的な選考基準(対象者基準)を定め、希望者全員が当然に再雇用される制度ではないことを明確にしておくことが重要です。





