判例・裁判例コラム

『精神的に不安定だから受診しろ』は適法? メンタル不調を理由とする自宅待機命令と雇止めの限界

鳥取地裁R7.9.25
 有期雇用の大学職員が、精神的に不安定と思われる状況となり、大声を上げて上司と言い合いをする、業務中に個人の携帯電話で電話をかけ、「サイバー攻撃」、「捜査」等の発言をするなどの言動が発生。大学はこの職員に医師の診断を受けるように指示し、帰宅させた。
 職員は主治医の診察を受け、不安性障害であるものの就労可能な範囲である旨診断された。
 これに対し、大学側は、慎重な対応が必要であるとして、自宅待機を命じ、大学が指定する医師の診断を受け、診断書を提出すること、その後に産業医の診断を受けること、自宅待機中は敷地内への立入り及び他の大学職員との接触を禁止することなどを指示する業務命令を発した。
 その後、指定医は職員を診察したうえで、2か月の休養加療が必要であるとする診断書を作成。そして、産業医は職員と面談をしたうえで、「非常に判断が難しい事例である」「就業可否のどこかに○をつける必要があるなら不可とせざるを得ない」などと判断。
 大学は、これに従い、職員を就労させることはできないとして、有期雇用の期間満了日に職員を雇止めした。
→大学が受診を指示したことは合理的な措置。
 これに対し、その後、主治医の診察を受け、不安性障害であるものの就労可能と判断されたこと、職員も就労継続の意思を示していたことを踏まえると、業務命令により自宅待機をさせた上、敷地内への立入りや他の職員との接触まで禁止する必要があったかについては疑問が残る。しかし、慎重な対応が必要であるとして上記の業務命令を発した判断が不合理とまではいえない。
 そして、主治医と指定医の診断が出された時点では、就労の可否に関する2名の医師の判断が食い違っており、いずれの判断が明確に誤っているとはいえない状況であったのであるから、産業医が結論として就労を不可とした点についても慎重を期したものと考えられ、不合理な判断とはいえない。
 よって、大学が就労継続困難であることを前提に、雇止めとしたことについて違法性は認められないと判断。

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