判例・裁判例コラム

労働時間を自己申告で管理することは適法?名古屋高裁の判断!

名古屋高裁R6.2.29
 障害者支援施設の職員らが雇用主である社会福祉法人に対し、残業代請求。法人は労働時間を職員の自己申告により管理していたと主張した
→労働時間を労働者に自己申告させるということ自体、曖昧な労働時間管理となりがちであり、所定時間労働時間を超える労働時間の申告をちゅうちょさせる方向に働くもの。労働時間の自己申告制が許容される場面は限定されるべきであり、本件であえて自己申告制を採用すべき事情は何ら認められない。法人は、時間外勤務は原則としてなかったと主張するが、だからといって法人が労働時間を自ら把握することができない理由にはならず、労働時間を労働者に自己申告させる必要性はない。また、法人は、タイムカードは施設建物の出入口付近に設置されており、職員らが勤務を終えるロッカー・休憩室からは距離があったから、タイムカードの打刻時刻は出退勤の時刻と一致しないと主張するが、そうであれば、ロッカー・休憩室にタイムカード打刻機を設置する等すれば良いのである。法人は看護師については、出退勤時刻をタイムカードによって把握していたというのであり、他の職員らを看護師と区別して扱う合理的な理由はない。労働者の自己申告によっていた本件法人による労働時間管理は、不適法であったというべきであると判断

 労働時間の管理方法については、自己申告によることは例外的な場面でのみ認められるとするガイドラインがあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
 本件の裁判例で、裁判所もこのガイドラインに沿った判断を示しました。

社会保険労務士会、その他人事労務関係団体向けのおすすめ研修・講演テーマです前のページ

『精神的に不安定だから受診しろ』は適法? メンタル不調を理由とする自宅待機命令と雇止めの限界次のページ

ピックアップ記事

  1. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    朝礼で職員同士が仲が悪いと発言した代表取締役の不法行為責任

    東京地裁R6.11.13 代表取締役が朝礼において、全職員の前で、唐…

  2. 判例・裁判例コラム

    始業前出社時間の割増賃金請求。東京地裁の判断

    東京地裁R6.1.24新規事業としてハウスクリーニング事業の…

  3. 判例・裁判例コラム

    美容師の退職後の競業避止義務違反に6万円の賠償命令!東京地裁の判断の理由とは?

    東京地裁R7.3.26表参道で美容院を営む会社が、自社店舗と他社から…

  4. 判例・裁判例コラム

    月額給与76万円→59万円に大幅減額された従業員が訴訟を提起!東京地裁の判断!

    東京地裁R7.3.13 管理職から非管理職への降格により月額給与を7…

  5. 判例・裁判例コラム

    自宅待機状態を続けさせたことが違法な退職勧奨であるとされた事例

    東京地裁R6.4.24嫌いな人物はとことん追い詰める、高圧的な態度で…

  6. 判例・裁判例コラム

    休職満了後も復職審査継続。 “さかのぼり自然退職”が認められた判決

    東京地裁R6.5.28休職者が復職を希望したため、会社は復職審査のた…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    復職審査における産業医と主治医の役割
  2. 判例・裁判例コラム

    東京地裁H28.10.7
  3. 判例・裁判例コラム

    正社員は賞与5カ月、嘱託社員はゼロ →最高裁“それでも違法ではない”と判断
  4. 判例・裁判例コラム

    在宅勤務日は退勤打刻だけでは残業代認めず!東京地裁が示した理由とは?
  5. 判例・裁判例コラム

    始業前の制服への着替え時間は労働時間にあたらない!東京地裁の判断の理由とは?
PAGE TOP