判例・裁判例コラム

退職勧奨で、 「それはもうクビでは?」 →「そう取ってもらって結構」 その場で書かせた退職届は有効? 東京高裁の判断!

東京高裁R5.10.30
 ソフトウェア会社で部長が社長と協議のうえ従業員に退職勧奨。退職届の用紙を事前に準備して臨んだ。
 従業員が退職届を持ち帰って検討したいと申し入れたが、部長はこれを拒否。従業員が反発して「それはもう退職勧告ではなくクビという宣告ではないか」と述べたところ、部長は「そう取ってもらっても結構です」と回答した。
 部長はその後も面談を続けて従業員に退職届への署名を求め、従業員は退職届を提出。しかし、後日退職合意の無効を主張して地位確認訴訟を提起した。
 一審裁判所は従業員も面談の中で反論、交渉しており、自由な意思による退職意思形成が妨げられたとはいえないとして退職合意は有効と判断。従業員が控訴した。
→従業員が退職届について持ち帰って検討したいと再三申し入れたことなどからすれば、従業員は内心においては退職勧奨に応じる意思はなかったと認められる。
 その後、従業員がその場で署名を求める部長に反発して「それはもう退職勧告ではなくクビという宣告ではないか」と述べ、部長が「そう取ってもらっても結構です」と返答し、面談開始から1時間半あまり経過した頃に従業員が退職届に署名した経緯からすると、これ以上何を言っても会社の方針が変わる見込みがないと判断し、内心は退職することに納得していなかったが、やむを得ず署名したと認められる。
 部長も従業員が合意退職に納得していないことを認識できた。
 退職の意思表示は従業員の真意によるものではなく、会社もそれを知ることができたから、心裡留保によるものとして、民法93条1項ただし書により無効。
 地位確認請求を認めた。

 本件が「心裡留保」にあたるのかは、法的に疑問も残りますが、「解雇」であるかのように誤解させる発言は、退職勧奨でしてはいけない発言の典型です。
 以下でも解説していますので併せてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/3641.html

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