札幌地裁R8.3.25
運送会社が事故を起こしたドライバーの給与から事故弁償金を4回にわたり合計10万円差し引いた。
会社は、ドライバーが起こした事故について会社が支出した自動車保険の免責金額20万円のうち半分の10万円をドライバーの給与から控除することを合意しており、自由な意思に基づいてなされた合意による相殺であるから、労働基準法24条の全額払原則には反しないと主張した。
→このような賃金控除が賃金全額払の原則に違反しないというためには、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在していたことが必要である。
本件ではドライバーが工場内でトレーラーをステージに接触させる単独事故を発生させ、会社との間で会社が負担した20万円のうち10万円を4回払で弁済する内容の弁済方法申出書を作成したことが認められる。
しかし、この事故についてドライバーに故意又は重過失があったと認めるに足りる証拠はなく、軽過失にとどまる。このように業務上の軽過失によって発生した損害について、労働者に責任を負担させることの合理性は慎重に検討すべきであることも踏まえると、本件において、事故弁償金の控除がドライバーの自由な意思に基づいて行われたものとは認め難い。
賃金全額払の原則に違反すると判断。
会社に控除分の支払い命令。
従業員が企業に与えた損害を、給与から控除するという場面で、注意を要する裁判例です。
一般に、従業員が発生させた事故についての、企業の従業員に対する損害賠償請求は、故意又は重過失の場合にのみ認められるとされています(水町先生の詳解労働法265ページ)。軽過失でも認められるとした裁判例もありますが、わずかです。
そのような中、本裁判例は、軽過失による損害賠償は、仮に本人が同意書面を提出していても、自由な意思に基づくとはいえず、給与から控除することはできないという判断をしています。
これは、同意による控除を否定したものですが、仮に労使協定による控除であっても、「事理明白なもの」とはいえないとして同様の結論になるように思われます。





