東京地裁R8.4.22
会社が従業員を解雇し、就業規則違反により解雇した旨を取引先に報告。
従業員はこの報告は名誉毀損またはプライバシー侵害であるとして会社に損害賠償請求
→従業員は会社に無断で元上司が設立した競業会社の取締役となり、会社の取引先に営業活動を行なっていた。会社は、調査の結果、本件従業員を取引先のプロジェクトメンバーから外すこととし、取引先に説明したところ、取引先からガバナンス上の問題を理由に調査結果や顧客向けの公式な報告を求められ、従業員を就業規則違反により解雇した旨を取引先に報告したことが認められる。
報告は、取引先から求められてしたやむを得ないものであり、報告の範囲も当該取引先にとどまっている。
そして、本件従業員は、競業避止義務違反について否定しており、解雇されたとの情報の提供に同意したとは考え難い。
これらのことからすれば、仮に本件従業員を就業規則違反により解雇したという情報が「個人データ」(個人情報保護法16条3項)に当たるとしても、報告は、会社の財産の保護のために必要がある場合であって、個人データの提供について、本人の同意を得ることが困難であったとして、同法27条1項2号の第三者提供の制限の除外事由にあたる。
よって、報告は、本件従業員のプライバシーを違法に侵害するものとはいえない。
また、報告は、正当行為であるといえるから、違法に本件従業員の名誉を毀損するものともいえない。
会社に不法行為は成立しないと判断。
企業側から見たポイント
従業員を解雇した事実やその理由は、従業員の名誉やプライバシーにかかわる情報であり、社外に伝える場合は慎重な判断が必要です。また、個人情報保護法との関係も検討する必要があります。
本件で不法行為が否定されたのは、取引先からガバナンス上の問題を理由に公式な報告を求められたうえでのやむを得ない報告であったこと、そして報告の範囲がその取引先にとどまっていたことが考慮されたためです。
逆に、取引先から求められていないのに会社から積極的に解雇の事実を伝えたり、その件と関係のない取引先にまで広く伝えたりした場合は、違法と判断されるおそれがあります。
また、伝える内容も必要な範囲にとどめるべきでしょう。本件の報告も「就業規則違反により解雇した」という内容でした。




