東京地裁R8.7.8
外資系企業の日本法人に採用された従業員が、入社約3か月後に試用期間の評価を伝えられた後、うつ状態となり休職開始。
約6か月後に試し出勤を行い、その最終日に復職との趣旨を伝えられた。翌日から5日間、定時で勤務したが、その後再び体調不良で欠勤開始。2週間後に出社したところ、会社から休職期間満了通知書を交付された。
これに対し、従業員が訴訟提起。
就業規則上、休職期間は6か月とされ、就業規則16条に、休職期間の途中において復職したものが同一、同種または類似傷病で6か月以内に欠勤するときは休職期間は中断せず、休職期間を通算する、旨の定めあり。
会社は、復職後すぐに欠勤したのだから、この規定により休職期間が通算され、休職期間満了により自然退職となると主張した。
→就業規則の規定は、労働者が私傷病により休職する場合に、休職期間の途中において復職した者が再び同一、同種、または類似の傷病により6か月以内に欠勤するに至ったときに、休職期間を通算するとの規定である。
従業員は、休職期間の途中ではなく、休職期間を使い切ったうえで復職しているから、そもそも同条の適用は認められない。
同条が、休職期間の通算によって自然退職の効果を発生させるものであることに照らせば、類推適用によって適用範囲を安易に拡張することには慎重に解すべきである。
休職期間満了を認めず、雇用契約継続を確認し、バックペイ支払命令
企業側から見たポイント
就業規則の何気ない言葉の選択が会社敗訴の一因となった事案です。
この判決の解釈では、休職期間の途中で復職するより、休職期間を使い切って復職したほうが、次回の休職期間が長くなることになります。そのような結論は制度として明らかに不合理ですが、規定の不備により、そのように解釈されました。
本件では、以下の画像のように、「休職期間の途中において復職したものが、同一、同種、または類似の傷病により6ヶ月以内に欠勤するに至ったときは、休職期間は中断しないものとし、休職期間の計算にあたっては出勤期間を除いて前後を通算する」と定められていました。
このように「休職期間の途中において」と書くと、休職期間を使い切った後に復職し、再度欠勤を開始した場合は適用できないという問題が生じます。
単に「休職後復職したものが」などとしておくべきでした。
また、「同一、同種、または類似の傷病」に限っている点も、適切とは言えません。メンタルヘルス不調では再休職時に診断名が変わることがあり、「類似」にあたるかどうかが争いになりやすいからです。
さらに、6ヶ月以内の欠勤の場合のみ通算となっていますが、より長い期間通算する規定でないと不都合が生じることがあるように思います。 本件でも分かるように、会社の敗訴を招く就業規則もあれば、逆に会社のピンチを救う就業規則もあります。
拙著「裁判例に学ぶ就業規則」では、そのような事例をたくさんとりあげて解説していますので、ぜひご参照ください。





