判例・裁判例コラム

「“法定休日を決めていない会社”は35%払わなくていい?」東京地裁の結論!

東京地裁R5.12.7
 従業員が休日出勤した際の割増賃金が支払われていないとして割増賃金請求。12月の休日出勤については、労働者は全ての休日出勤日が法定休日にあたるとして35%割増の計算で請求したのに対し、使用者は請求対象日のうち2日は所定休日であるから割増率は25%であると反論した
→労働基準法35条1項は、使用者は労働者に対し毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないと定めている。このことからすれば、週2日以上の休日を付与する場合にどちらを法定休日とするかは、労働契約又は就業規則で法定休日を定めない限り、使用者の裁量に委ねられていると解される。これを本件についてみると、雇用契約書の休日欄には土日祝日、年末年始及び夏期休暇の記載はあるが、法定休日に関する記載はなく、就業規則にも法定休日に関する定めがない。そうすると、会社が、上記2日について法定休日ではなく所定休日であったと主張する以上、これらの日が法定休日であったと認めることはできないから、上記2日の休日出勤に適用される割増率は25%となると判断

 皆様ご承知の通り、現行法上は、法定休日を就業規則で決めておくことが法的に義務付けられているわけではありません。就業規則に法定休日を特定する定めがない場合に、日曜日が法定休日になると解釈する考え方もありますが、ポストの裁判例が判示するように、使用者がその裁量で休日の中からどれを法定休日にするかを選択できるという解釈が妥当であると考えられます。そして、このように使用者が選択できるようにしておくことは、(少しではありますが)割増賃金の額を減らすことにつながります。 ただ、時間外労働と休日労働では、36協定での扱いや法定割増率が異なります。そのため、私としては、労基法の労働時間規制を明確に遵守し、割増賃金支払義務を明確に履行する観点からも、就業規則で法定休日を特定しておくことをおすすめしています。そのうえで、もし支払額を減らしたい場合は、就業規則で法定休日を特定したうえで、使用者に振替権限をもたせる規定をおくことでも対応可能です。

東京地裁R4.12.2前のページ

仕事のミスで適応障害に…それでも“業務起因”は否定された―大阪地裁判決次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例

    東京地裁R5.11.15従業員が、会議への参加や業務の引き継ぎ等の業…

  2. 判例・裁判例コラム

    始業前の就業準備行為の労働時間性

    東京地裁H15.10.3就業規則に「15分前迄に出社し、就業に適する…

  3. 判例・裁判例コラム

    どのくらいの時間数の副業なら本業に支障を生じさせると認められる?

    東京地裁R3.7.8集団住宅の管理員として有期雇用されていた…

  4. 判例・裁判例コラム

    1000円の着服をした運転手の退職手当1200万円超を全額不支給にした事案

    最高裁R7.4.17京都市交通局に勤務するバス運転手が運賃1000円…

  5. 判例・裁判例コラム

    役職手当を固定残業代と定める規定の有効性

    東京地裁R5.10.6整骨院経営会社が給与規程で役割給、役職手当、資…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    当日欠勤・早退が続く従業員をシフトから排除は違法?→おにぎり店経営会社に賃金支払…
  2. 判例・裁判例コラム

    「復職可能であり、3か月間は短時間勤務及び軽度業務に限る配慮が必要」と主治医が診…
  3. 判例・裁判例コラム

    休職満了後も復職審査継続。 “さかのぼり自然退職”が認められた判決
  4. 判例・裁判例コラム

    「担当職務の見直しに合わせ、給与の見直しを行う場合がある。見直し幅は、都度決定す…
  5. 判例・裁判例コラム

    医療機関が職員54名に“この看護師のパワハラを見たか”と実名を告げて調査 …これ…
PAGE TOP