判例・裁判例コラム

“経験3年のSE”で採用したのに電卓アプリも作れない…試用期間中の解雇は有効?裁判所が重視した事実とは?

東京地裁R5.7.28
病院がシステム開発経験者として採用した従業員を試用期間満了を待たずに解雇
→病院は、採用時の募集要項で、対象者として「システム開発経験(目安2年以上)、SQLスキルをお持ちの方」などと記載し、従業員も職務経歴書に約3年間社内SEとして勤務経験があることを記載し、面接時にも説明していた。このことからすれば、システムエンジニア(SE)として少なくとも2年程度の経験とそれに応じた能力を備えている者として採用されたと認めるのが相当。
しかし、①入社から間もない時期にIPアドレスの基本的な知識に関する誤りがあった。
②電卓アプリはプログラミングの初心者が基礎を学ぶために活用されるところ、従業員は、少なくとも約1か月間の間に電卓アプリを作成できず、作成途中の基本的な英単語の誤りが多く、提出したものもコーディング規約に従って作成されていなかった。
③英語の「2」をインターネットで検索していたことや基本的な英語について検索していたことも踏まえると、英語の知識も不十分であった。
④さらに、簡単なコードであり、一定の経験のあるSEであれば時間を掛けずに作成することができるお問合せアプリの作成に5日を要すると述べた。
以上からすれば、従業員は、試用期間満了日までに指導等を受けたとしても、SEとして2年程度の経験に応じた能力を有さないと見込まれる状態にあった。よって、少なくとも就業規則の解雇事由「試用期間中の者で職員として不適格と認めたとき」にあたると判断。

本件のような経験者採用の能力不足解雇事案では、企業側がどう能力不足の事実を主張・立証するかが問題になります。
この事案の、
「電卓アプリはプログラミングの初心者が基礎を学ぶために活用されるところ、従業員は、少なくとも約1か月間の間に電卓アプリを作成できず、作成途中の基本的な英単語の誤りが多く、提出したものもコーディング規約に従って作成されていなかった。 」
のように、
その職種におけるもっとも基本的なものを実際にやってもらって、その結果で立証するというのは1つのパターンのように思います。
解雇紛争が想定される場面では、業務としては必要なくても、そのようなテストをやっておかなければなりません。
そのほか、この事案では、「英語の「2」をインターネットで検索していたことや基本的な英語について検索していたことも踏まえると、英語の知識も不十分であった。 」と認定されており、ネット検索履歴を立証に用いていることがうかがわれます。
会社が後日調査したところ、インターネットで数字の「2」の英語のスペルを検索していたことがあったほか、インターネットで基本的な英語について検索を行っていたことが判明したと認定されています。

裁量労働制のもとでほとんど出社しない従業員!会社の判断で裁量労働制から外すことは可能?東京地裁の判断!前のページ

事故3回の運転手を「診断書が出るまで乗務停止」。それは事実上の解雇か?東京地裁の判断次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    実質個人経営の居酒屋を経営する会社代表者の責任

    東京地裁R5.3.23居酒屋で勤務する33歳の従業員が突然死…

  2. 判例・裁判例コラム

    労災認定されて休業中の従業員の解雇

    大阪地裁R6.11.29広告宣伝等を事業とする会社の…

  3. 判例・裁判例コラム

    賃金規程に基づいてした給与等級引き下げの効力について判断された事例

    東京高裁H19.2.22年功型賃金から成果主義賃金への変更にあたり、…

  4. 判例・裁判例コラム

    聴覚障害のある職員に対する配慮として会議の筆記サポートが必要?

    東京地裁R7.3.26聴覚障害があり、メガバンクに障害者雇用…

  5. 判例・裁判例コラム

    65歳以降の従業員の雇止めは65歳までの雇止めとどう違う?

    東京地裁R7.3.11 道路工事会社が定年後65歳までは再雇…

  6. 判例・裁判例コラム

    日常的な強い叱責がパワハラにはあたらないが安全配慮義務違反ありとされた事例

    徳島地裁H30.7.9銀行職員が自殺し、遺族はパワハラ自殺と主張。→…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    外注業者の費用負担による接待旅行への参加を理由に諭旨解雇!処分の効力は?東京地裁…
  2. 判例・裁判例コラム

    教師が生徒からチョコレートをもらうことは懲戒事由?
  3. 判例・裁判例コラム

    特許事務所が入所時に従業員に提出させた競業避止義務の誓約の効力についての判断事例…
  4. 判例・裁判例コラム

    「解雇を避けるため」でも許されない?職種限定合意はどこまで会社を縛るのか【令和6…
  5. 判例・裁判例コラム

    「発達障害を隠して入社」 障害を知った直後に解雇した事案! 横浜地裁の判断!
PAGE TOP