判例・裁判例コラム

裁量労働制のもとでほとんど出社しない従業員!会社の判断で裁量労働制から外すことは可能?東京地裁の判断!

東京地裁H28.10.7
裁量労働制が適用され、客先での常駐業務を担当する従業員が、5週間の間に合計27時間しか就業せず、会社が問題視。会社の判断で裁量労働制の適用から除外し、それまで支給されていた裁量手当の支給も停止した
→裁量労働制は、労働者にとっても使用者による労働時間の拘束を受けずに、自律的な業務遂行を可能とする利益がある。また、裁量労働制に伴って裁量手当その他の特別な賃金の優遇があれば、その利益もある。ある労働者が裁量労働制の適用を受けたときは、いったん労働条件として定まった以上、この適用から恣意的に除外されて、裁量労働制の適用による利益が奪われるべきではない。労働者の同意を得ずに裁量労働制の適用から除外し、これに伴う賃金上の不利益を受け入れさせるためには、労使協定及び就業規則で裁量労働制の適用から除外する要件・手続を定めることが必要。本件の会社が行った除外措置は、本人の反対にもかかわらず、会社のみの意思により労働条件を変更する十分な労働契約上の根拠がなく、無効。会社に対し、さかのぼって裁量手当分の支払命令。

ポストのような極端な事案、不誠実ともいえる働き方については、適切な就業規則の整備により対応する必要がありますね。これは、裁量労働制を導入する場合は必ず就業規則で対処しておくべき点です。
なお、裁量労働制は、法改正の検討の場面では、労働者に不利益な制度と言われることが多く、確かに労働時間や割増賃金の面でそのような側面もあります。
ただ、一方で、ポストの裁判例でも判示されている通り、労働者にとっても使用者による労働時間の拘束を受けずに自律的な業務遂行を可能とする利益がある制度であり、裁判になれば、労働者を一方的に裁量労働制から外すことは認めないと判断されることもあります。
個人的には裁量労働制の悪い面だけを強調するのではなく、良い面もみるべきだと思っています。裁量をもって仕事をしたいという人も多いのではないかと思いますし、私としてはそのような働き方もより広く認められるべきだと思います。

医療機関が職員54名に“この看護師のパワハラを見たか”と実名を告げて調査 …これは名誉毀損になる?ー仙台地裁の結論!前のページ

“経験3年のSE”で採用したのに電卓アプリも作れない…試用期間中の解雇は有効?裁判所が重視した事実とは?次のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    支払いすぎた賞与を翌年の賞与から控除できる?

    東京地裁R5.12.28外資系の医薬品販売会社が、従業員に対し、9月…

  2. 判例・裁判例コラム

    人事考課について会社は広範な裁量があるのか?

    東京地裁R7.2.17大手マーケティング会社が、月例給与の改定率を、…

  3. 判例・裁判例コラム

    派遣会社が派遣社員に競業避止義務を課すことに正当な目的はあるのか?

    東京地裁R4.5.13システムエンジニアを企業に派遣する派遣会社が、…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    労働者代表の同意を得て労基署長に届け出たが周知されていない就業規則に基づく懲戒解…
  2. 判例・裁判例コラム

    実質個人経営の居酒屋を経営する会社代表者の責任
  3. 判例・裁判例コラム

    業績悪化で再雇用社員に勤務日削減の提示(週5→週3)⇒労働者が拒否して雇止め無効…
  4. 判例・裁判例コラム

    従業員に周知された資料に基づき、降格にともなう賃金減額を行った事案
  5. 判例・裁判例コラム

    休職者が産業医の面談は圧迫面接だと主張した事案
PAGE TOP