判例・裁判例コラム

ジョブ型雇用の従業員について、担当業務が廃止された場合の解雇の有効性

東京地裁R6.9.20
メガバンクが、職務内容をジャパンストラテジスト(東京の英文日本情報発信担当アナリスト)他として雇用され、年額3000万円超の支給を受けていた職種限定の従業員を整理解雇した
→本件は人員削減のために行う整理解雇であると解されるところ、その有効性の判断については、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性及び④解雇手続の相当性等を総合考慮して判断すべき。
この点、まず、①については本件解雇は、本件従業員の担当業務を他のグループ会社に集約して廃止したことによるもので、業務の廃止は、経営判断として合理性がある。
次に、②については、銀行は業務が集約されるグループ会社に本件従業員の受入れを打診したがグループ会社に断られた経緯がある。また、賃金は減額になるものの社内の他職種への配置転換を打診したが、本件従業員が賃金減額に応じない態度を示して受け入れなかった経緯がある。銀行は職種限定合意があることを前提としつつ、本件従業員に対し、グループ会社への受入れの打診や合理性のある配置転換の提案等をしたと認められる。
また、③については、本件従業員に適用される就業規則には、総合職に適用される就業規則にはない「拠点および施設の閉鎖、業務量の著しい減少等の業務上の必要性が失われた場合」には解雇できる旨が定められていたことや本件従業員の雇用について職種限定合意があったことからすれば、業務の廃止に伴って、この業務に従事する本件従業員を解雇対象としたことには人選の合理性がある。
さらに、④についても、銀行は、解雇に当たり、本件従業員と約半月の間に3回面談を行い、説明文書を交付の上、相応の時間をかけて説明や質問に対する対応を行ったこと、その際、退職する場合は賃金の1.5年分の再就職支援金を支払う旨提示したことからすれば、解雇手続の相当性も認められる。
解雇有効と判断。
労働判例ジャーナル156号

企業側から見たポイント
事案の背景として、就業規則について丁寧な作り方がされていたことがうかがえます。
ポストでも引用した通り、解雇された従業員に適用される就業規則には、総合職に適用される就業規則にはない「拠点および施設の閉鎖、業務量の著しい減少等の業務上の必要性が失われた場合」という解雇事由が定められていました。
これは、いわゆる整理解雇事由ですが、通常の整理解雇事由の書き方、例えば、厚労省モデル就業規則の「事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の 縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。」とは違っています。 特に厚労省モデル就業規則の「かつ他の職務への転換が困難なとき」にあたる部分がないことがポイントです。
このように職種限定契約であることにフィットした整理解雇事由が設けられていました。
判決は理由付けの中で、このような就業規則の規定ぶりも、解雇有効の根拠にあげています。
このように、就業規則は雇用契約のルールを定めるものなので、その細かい文言1つで裁判の結論が変わってきます。
このことは、解雇事由の書き方についても当てはまります。
私の新刊書籍「裁判例に学ぶ就業規則ー勝敗を分けた規定と整備の実務」裁判例【9】では、この点がきっちりできていなかった敗訴事例もとりあげて解説しています。

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