判例・裁判例コラム

シフト未確定なら有給は取れない?→裁判所『そもそも就労義務なし』と判断

東京地裁R6.3.26
ラーメンチェーンの運営会社が外国籍の夫婦を雇用。
雇用契約書では勤務店舗や勤務日数、時間帯を特定することなく、始業・終業時刻等について「1日の労働時間を8時間とし、別途シフト表提出の上、個別に定める。」と記載した。
しかし、7月にこの夫婦が勤務していた店舗が閉店となり、会社は別の店舗での8月のシフトを提示したが、夫がこれを拒否。
10月になって夫婦は代理人弁護士を通じ、有給休暇の取得を文書で通知した。
これに対して、会社は有給休暇は出勤日しか取得できないのでシフト確定後に申請するように通知。
これを受けて、夫婦は、代理人弁護士を通じ、有給休暇の権利が残っていた8日分の日を特定して、勤務店舗、勤務日、勤務時間帯の希望を伝えるとともに、その希望日について、全て有給休暇を取得すると申請。
一方、会社は、会社が立て替えた社会保険料の従業員負担分の支払いを求め、シフトはその入金後に通知すると回答した。 夫婦らはこの会社の対応が有給休暇の取得妨害であると主張。
→雇用契約書に「別途シフト表提出の上、個別に定める。」と定めるのみであることを踏まえると、夫婦らの就労義務は、会社がシフトを定めることによってその内容が確定し、発生する。
夫婦らは、勤務店舗、勤務日、勤務時間帯について一方的な希望を述べたうえで有給休暇の取得を申請しているが、会社がこのような一方的な希望に応じてシフトを定める義務を負うとはいえない。
会社がシフトを定めない限り就労義務が発生しない以上、就労義務の免除である有給休暇を取得する前提を欠く。
会社は、有給休暇に関する夫婦らの要求に応じる義務を負っていたとはいえず、不法行為の成立は認めることができないと判断

不備ある時間外手当の支払いは賃金規程を改定しても無効?調整給ありでも“不利益変更”とされ会社敗訴【大阪地裁】前のページ

「定年後だから賞与は安くていい」は通用する? →名古屋高裁、定年前との賞与格差を“違法”と判断次のページ

ピックアップ記事

  1. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    職場内で秘密録音したデータを民事訴訟の証拠として利用できる?

    東京高裁R5.10.25歯科医院に勤務する職員が、理事長が院内で自身…

  2. 判例・裁判例コラム

    日常的な強い叱責がパワハラにはあたらないが安全配慮義務違反ありとされた事例

    徳島地裁H30.7.9銀行職員が自殺し、遺族はパワハラ自殺と主張。→…

  3. 判例・裁判例コラム

    懲戒処分前の弁明の機会付与に従業員側弁護士を同席させる義務はある?

    東京地裁R5.5.24懲戒解雇にあたり従業員に弁明の機会を付与。従業…

  4. 判例・裁判例コラム

    セクハラ被害の訴えと休職期間の満了

    東京地裁R6.11.14食品販売会社が精神疾患で休職していた…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    鳥取地裁R6.2.16
  2. 判例・裁判例コラム

    先輩看護師の新人看護師に対する「人間的に無理」という発言はパワハラ?
  3. 判例・裁判例コラム

    始業前の就業準備行為の労働時間性
  4. 判例・裁判例コラム

    引越し会社で特定の作業をこなした場合に支給される業績給は労基法施行規則19条6号…
  5. 判例・裁判例コラム

    威圧的な暴言を吐き、出勤停止処分にも従わない従業員の解雇は有効?岡山地裁の判断
PAGE TOP