判例・裁判例コラム

給与担当者が情報を他の職員に漏らしたことに対する叱責がパワハラにあたるとされた事例

那覇地裁R5.6.27
専務から、社員の昇給、昇格の見直しについて事前に聴いていた給与事務担当者が、他の社員にこれを話した。専務は「あなたがなんで自分で判断するの。職員に話して、大馬鹿野郎じゃないの。大問題だよ。これこそ懲罰事項になるんだよ。給与担当というのはね、こういったことに関して非常に敏感にならないといけない。社員は仲間かもしれないけど、あなたは管理者側に立たないといけないんだよ。大問題だよこんなこと。」などと叱責。

→具体的に社員への他言を禁止されていない以上、就業規則上の懲戒事由には該当せず、それにもかかわらず、「懲罰事項になる」、「大馬鹿野郎」、「大問題」などと過激な言葉で叱責したことは、パワーハラスメントして不法行為に該当する。給与事務担当者として知った事実を他の職員に話したことについて指導という正当な理由に基づいてされた叱責であり、その内容も、人格非難にまで及ぶものではなく、他の職員の面前でされたものではない1回限りのものであること等を踏まえれば、慰謝料額としては3万円が相当と判断。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    リハビリ勤務の規定をおけばリハビリ勤務を認める義務がある?

    大阪地裁H26.7.18会社が双極性障害等で3回目の休職をしていた休…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    解雇後に会社経営を始めた従業員からのバックペイの請求について判断した事例
  2. 判例・裁判例コラム

    採用内定後のバックグランドチェックの結果に基づく内定取り消し
  3. 判例・裁判例コラム

    総合職にのみ社宅利用を認め、一般職には認めないことは間接性差別?
  4. 判例・裁判例コラム

    売上額に応じて支給される業績給は労基法施行規則19条6号の出来高払制賃金にあたる…
  5. 判例・裁判例コラム

    適応障害による休職からの復職にあたり賃金を減額した事案
PAGE TOP