判例・裁判例コラム

教頭を侮辱的な言葉で非難する教員に対する懲戒処分

東京地裁R6.6.27

高校の教員らで組織する組合の執行委員長を務めていた教諭が、教頭に対して、組合の要望などが着任したばかりの校長に共有されていないなどといった苦情を伝える中で、「どうなってんだよ、ここの管理職」などと失礼な表現を使って教頭を非難した。また、組合の要望が校長に伝わっていないことについて、語気を強めて「だから、おかしいでしょっつってんだけど。言って来てんのにちゃんと。筋も通しているのに。」などと述べた。教頭はこの会話を録音していた。学校法人は、この教諭について他の類似する言動とあわせて停職14日間の懲戒をした。
→上長に対して語気強く、侮辱的な言葉を使って意見、苦情を述べて、相手を萎縮させ、自分の意見を通そうとする行為や、上長に不合理な言いがかりをいいながらその身体に接近するといった行為であったところ、その態様が不良なものであり、4回の機会にわたって行われている。教諭は、「どうなってんだよ、ここの管理職」との発言は、独り言であると主張し、その他の発言も威力を示したり、風紀を乱したりするものではない旨主張するが、録音データにより認められる口調、使った言葉などに照らし、採用できない。一方で、この教諭が伝えようとした意見自体は明らかに不相当とはいえず、むしろ学校法人の上層部において組合の要望などの情報が適切に共有されていなかったことが認められる。しかし、その点を考慮しても、言動の性質や態様からすれば停職14日間の懲戒が裁量権を逸脱・濫用したものとはいえないと判断。

大声で非難する発言を理由とするけん責処分前のページ

些細なミスを広範に注意した後の能力不足解雇次のページ

ピックアップ記事

  1. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    精神疾患からの復職にあたり、配転命令を拒否する従業員への対応事例

    東京地裁R5.12.28東京本社勤務の従業員が仙台支店への配転を命じ…

  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大阪地裁R6.3.27)
  3. 判例・裁判例コラム

    役職手当を固定残業代と定める規定の有効性

    東京地裁R5.10.6整骨院経営会社が給与規程で役割給、役職手当、資…

  4. 判例・裁判例コラム

    試用期間中に逮捕・勾留された従業員を解雇した事案

    東京地裁R5.11.16建設会社に試用期間6か月、月給116…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    自宅待機状態を続けさせたことが違法な退職勧奨であるとされた事例
  2. 判例・裁判例コラム

    「頭おかしいから。」「水商売やってた人間が。」などと部下を罵倒した支配人を普通解…
  3. 判例・裁判例コラム

    雇用契約書に明記した固定残業代の主張が認められなかった事例
  4. 判例・裁判例コラム

    ハラスメント調査への不服を経営陣らに送り続ける社員の解雇
  5. 判例・裁判例コラム

    適応障害による休職からの復職後も異常行動がある従業員に対する再休職命令の効力
PAGE TOP