判例・裁判例コラム

些細なミスを広範に注意した後の能力不足解雇

東京地裁R4.2.2

職員約900名の法人が新卒者を月給約21万円、試用期間3か月で採用。法人は、試用期間を1回延長したが、その後、この職員が基本的なミスを繰り返し、注意指導による改善が見込めない、円滑なコミュニケーションができないなどとして解雇した

→職員が注意指導を受けた勤務状況には、ファイルの入力作業における入力の誤りや入力漏れ、スキャン後の書類の誤った部署への回付など基本的な事項が多数ある。試用期間延長の前後を通じて基本的なミスを繰り返していた。もっとも、ミスによる影響は、幸いにも法人内部にとどまり、同僚や関連部署の業務に支障を生じさせても、法人に損害を与える性質のものではなかった。
 他方で、部長らがこの職員に注意指導した項目の中には、例えば、ファイルの箱詰め作業においてファイルの上下を間違えるなどといった直ちにミスや不備とはいい難いものも含まれている。些細な遅れや不手際も含め、広範に注意され、職員はこのような注意指導に対し、反発することはなくメモを取るなどして改善の姿勢を見せていた。メモをした内容がその後の作業に活かされていないなどの指摘を受け、同じことを二度質問してとがめられたこともあり、そのような中で萎縮して業務を行い、必要な質問や確認ができないことにより更なるミスを誘発した面も否定できない。勤務不良の程度が重大で改善の見込みがないと直ちにいうことはできず、他部署への配転等により改善の機会を与え、解雇の適否を慎重に判断すべきだった。試用期間中であったことを考慮しても解雇無効と判断

教頭を侮辱的な言葉で非難する教員に対する懲戒処分前のページ

定年前の業務命令違反について定年後に懲戒処分できる?次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    私傷病休職の期間を会社の判断で延長できる?

    大阪高裁H25.1.18 会社は、休職期間の延長は労働者に有利だから…

  2. 判例・裁判例コラム

    会社の要請に反する行動を理由とする降格

    仙台高裁R5.1.26基本給=等級給+評価給と定め、等級給は等級に応…

  3. 判例・裁判例コラム

    就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?

    東京地裁R5.12.14給与規程において、「業務内容の変更に伴い、そ…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用における能力不足解雇
  2. 判例・裁判例コラム

    在宅勤務の権利を主張し、出社指示に従わない従業員の解雇
  3. 判例・裁判例コラム

    名古屋地裁R5.1.16
  4. 判例・裁判例コラム

    主治医は復職可能・指定医は回復は一時的で復職不可と診断した場合の復職可否判断事例…
  5. 判例・裁判例コラム

    午前9時を始業時刻とする会社で午前8時より前にタイムカードがされていた場合の早出…
PAGE TOP