大阪地裁R6.3.27
病院の事業譲渡に伴い、全職員が譲渡日に退職し、その後、新事業者に雇用されることとなった。譲渡日の退職にあたり、職員の3分の2にあたる232名が一斉に退職前の有給消化を申請した
→一般的に、退職前の有給申請について使用者が時季変更することは、他の時季に有給取得の可能性がないから、認められない。しかし、本件で232名が一斉に有給申請すると、病院業務に重大な支障を生じることは明らかであり、そのような事情がある場合には、退職前の有給消化であっても、使用者は労働者ができるだけ有給を取得できるよう配慮しながら時季変更権を行使することは許されると判断
この事案では、年休の時季変更権行使が認められるかとは別の問題として、使用者が退職日までに職員らが年休を完全消化して退職できるようにシフトを調整するなどの具体的な措置をとる義務を負っていたかどうかも争点となりました。裁判所は、「使用者が全ての労働者に対して年給全てを取得させるような具体的な措置を講ずる義務を負っていたと解することはできない。」として、これを否定しています。 事業譲渡の際に新事業者が有給休暇を引き継がなかったことでこのようなトラブルになったと考えられます。
西川としては裁判所の結論は妥当だと考えますが、有給日数の多くを消化できなかった労働者は気の毒だとも感じます。
有給休暇の時季変更権については以下もご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/2152.html
事業譲渡でも、有休残日数を新事業者に引き継ぐ契約をするか、退職時の未消化有休は買い取る処理をするのが円満だと思います。
この事案でも、病院は新事業者に有休残日数を引き継いでもらう方針だったようで、職員にもそのように案内していました。
しかし、それがうまくいかずに、一斉の有給消化を申請される事態に至りました。
裁判所は、時季変更権の行使を認めました。
その背景には、急性期医療を行う医療機関であり、病床数に対して法令上必要な人員が定められていて、それを確保できるように勤務計画表が作成されていたという事情があります。
そのため、本件の判断は一般の事業者には必ずしもあてはまるものではないと考える必要があります。
なお、この事案では、時季変更権行使が認められるかとは別の問題として、使用者が退職日までに職員らが年休を完全消化して退職できるようにシフトを調整するなどの具体的な措置をとる義務を負っていたかどうかも争点となりました。
裁判所は、「使用者が全ての労働者に対して年給全てを取得させるような具体的な措置を講ずる義務を負っていたと解することはできない。」として、これを否定しています。





