判例・裁判例コラム

従業員が、日時を特定せずに「副主任からいじめを受けている」との抽象的な報告。この場面で会社がとるべき行動とは?裁判所は会社の調査不足を指摘!

東京地裁R4.12.22
従業員数約20名の会社で、従業員が、副主任から嫌がらせを受けているとして「職場いじめについての報告」と題する書面を代表者に提出。対応を求めた。会社は調査の結果、いじめの事実はなく、従業員の妄想に過ぎないと判断してこの従業員に回答し、あわせて退職勧奨を行った。しかし、従業員は退職に応じず、会社はこの従業員を解雇
→従業員が職場において嫌がらせを受けていると感じた際に上司に相談したり対応を求めたりするのは当然であり、そのこと自体を問題視するのは不適切。従業員は代表者に書面を渡すなどしているものの、主任に相談した上でこのままでは解決しないと考えたからであり手順を踏んでいるし、会社の規模に照らしても代表者に直接対応を求めることが不相当とまでいえない。会社は、調査の結果として、嫌がらせの主張は従業員の妄想にすぎないと結論付けたものの、事情聴取については当事者以外も含めて幅広に行う必要があると考えられるところ、当事者である副主任に対して聴取したのみで、従業員に対しても改めて具体的事情を確認するなどしていないことに照らせば、調査自体が極めて不十分。ましてや、会社は、本件において、従業員の述べる事情について日時等が特定されておらず抽象的であると考えたというのだから、従業員に対し、具体的事情を確認する必要性は高かった。会社は、本件によって、従業員と副主任が不仲であることを把握したのだから、その原因を探ったり、両者の関係を改善したりしようという努力をすべきであるのにこれを怠り、対応を求めた従業員を排除しようとしたというべきであり、会社による関係改善の努力があれば、関係が改善した可能性も否定できない。協調性欠如の解雇理由にはあたらないと判断。その他会社が主張した業務遂行能力欠如の解雇理由についてもこれにあたるとはいえない。解雇無効と判断。

これはあかんやろ!
という感じですが、従業員20人くらいの職場で、会社かられ見れば妄想と思えるようないじめの報告がされると会社として対応に困るのは事実です。裁判所がいっている関係改善の努力というのも、小規模の職場で一度壊れてしまった人間関係を会社が関与して関係改善させるということは非現実的と思える場面が多いように思います。
しかし、仮に妄想だと見えるものでも(むしろ妄想と思うからこそ、)職場内の全員から調査するなど公正な調査をしてその結果を示すべきでした。本件の会社のような対応をしてしまうと、本当にハラスメントがあったときも、従業員は相談できなくなってしまいます。ハラスメント相談を理由に退職勧奨をしたり、解雇するといった対応は絶対にすべきではありません。小規模の職場で手が回らない、ノウハウがないということであれば、専門家の手を借りるべきでした。

ハラスメント調査については以下の記事でも解説していますのであわせてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/1806.html

定年後再雇用をめぐる退職勧奨の問題事例?東京地裁の結論!前のページ

1月19日に最高裁で弁論!雇用契約書に「有期雇用契約社員就業規則を適用する」とあるのに該当の就業規則が未作成!労働者からの賠償請求は認められるか?次のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    携帯電話の位置情報に基づいて割増賃金請求できる?会社側の反論事例。

    東京地裁R7.7.18医療関係のシステムを扱う会社の営業部門に勤務す…

  2. 判例・裁判例コラム

    年俸制における賃金減額にはどのような規定が必要か?東京地裁の判断

    東京地裁R7.6.5 ソフトウェア開発会社が公認会計士資格をもつ労働…

  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6.5.15)
  4. 判例・裁判例コラム

    就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?

    東京地裁R5.12.14給与規程において、「業務内容の変更に伴い、そ…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    通勤中の電車内で盗撮行為を行った課長を懲戒解雇した事案
  2. 判例・裁判例コラム

    引越し会社で特定の作業をこなした場合に支給される業績給は労基法施行規則19条6号…
  3. 判例・裁判例コラム

    入社前に雇用契約書を作成すれば、試用期間2か月→雇用期間2か月に変更できる?
  4. 判例・裁判例コラム

    パワハラ加害者による調査協力拒否、調査妨害を理由とする普通解雇の有効性
  5. 判例・裁判例コラム

    会社の安全配慮義務。どこまでやれば履行したといえる?福井地裁の判断
PAGE TOP