判例・裁判例コラム

「長すぎる休職制度」を見直した病院が敗訴! 裁判所が問題視した点とは?

京都地裁R7.10.2
病院が就業規則の私傷病休職の規定を変更
変更前は、私傷病で1年半以上欠勤したときに休職とし、休職期間は1年という内容。
変更後は、私傷病で有給休暇を含めて3か月以上欠勤したときに休職とし、休職期間は3か月を限度として病院が指定した期間という内容。 変更の約3年半後に私傷病で休職となり、その後休職期間満了で退職となった職員が、就業規則変更は必要性、相当性、合理性がなく無効であると主張した
→新規則は、休職に至るまでの欠勤期間を短縮するとともに、休職期間も最長3か月に短縮したうえ、病院の判断でさらに短縮することも可能とする内容。休職期間の下限は規定されていない。私傷病により退職扱いとなるまでの期間を約10分の1に短縮するもので不利益の程度は大きい(2年半→最短3か月)。
旧規則では、欠勤および休職期間の2年半が経過しなければ退職扱いとすることができず、病院としては代替人員の確保もままならないため、その職員の業務を他の職員が負担する必要がある。このような負担を軽減するために、旧規則を変更する必要があったことは認められる。しかし、私傷病により退職扱いとなるまでの期間を約10分の1に短縮しなければならないほどの必要性、相当性はない。就業規則変更は労働契約法10条の要件を欠き、新規則を本件職員に適用できないと判断。

さすがにいきなり、10分の1にしたのは不適切だったと思います。
では、もう少し穏当に、例えば変更内容として、傷病手当金の期間にもあわせて、3か月以上欠勤で休職期間を1年2か月としていたらどうかといえば、それでも本裁判例と同じ判断になった可能性があるように思います。
就業規則で一度自社にあわない規定を作ってしまうと、後で変更しても、いつまでも不利益変更だといわれ続ける危険を負うことになります。

部下提出の日報に「『意味不明、説明せよ』連発 →裁判所『人格攻撃でパワハラ』会社敗訴【長崎地裁】前のページ

明るく真面目だった警察官が3か月の追及型指導の末に自殺。 県の責任は?宮崎地裁判決次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    日本語能力の不足を理由に外国人大卒者を解雇した事例

    東京地裁R5.12.1日本企業がペルー出身の大卒者を採用した…

  2. 判例・裁判例コラム

    PIP実施方法の問題点が指摘され、解雇が無効とされた事例

    東京地裁R6.3.18前職でデジタルマーケティングを…

  3. 判例・裁判例コラム

    小規模企業の整理解雇では役員報酬の削減が必要?

    東京地裁R6.1.30製造業者が新たに訪問介護事業を開始したが、訪問…

  4. 判例・裁判例コラム

    熱中症で亡くなった従業員の遺族からの損害賠償請求

    福岡地裁小倉支部R6.2.13従業員がサウジアラビア出張中の屋外作業…

  5. 判例・裁判例コラム

    復職可否の立証責任

    東京地裁H25.1.31復職可否の立証責任労働者の治療・回復に係る情…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    裁量労働制であれば生活リズムが整っていなくても復職できる?
  2. 判例・裁判例コラム

    無断で“自分の給料を1億円増額”――事務局長の不正はどこでバレた?東京地裁が懲戒…
  3. 判例・裁判例コラム

    過半数代表選出にあたり無投票者は有効投票にみなすと定めた場合の効力
  4. 判例・裁判例コラム

    配転命令を受けた従業員からの職種限定合意の主張が認められなかった事例
  5. 判例・裁判例コラム

    日報を提出しない従業員に対するけん責処分
PAGE TOP