判例・裁判例コラム

「初回発覚で懲戒解雇?」 運転中のスマホ+喫煙 バス運転手の懲戒解雇を東京地裁が有効と判断!

東京地裁R7.10.23
勤続7年のバス運転手について、回送での運転中に、運転席周辺にスマホを置いて操作し、また禁煙である車内で喫煙していたことが発覚。バス会社は懲戒解雇した。
これに対して、運転手は、会社から注意を受けたのはこの1回のみで、父親の体調不良からすぐに連絡を取ることができる状態である必要があったのであり、懲戒解雇は重すぎると主張。訴訟を提起した。
→運転走行中のスマホ操作や喫煙は、就業規則等の社内規則に違反する。 また、スマホ操作については、道路交通法により禁じられ、その違反行為は拘禁刑を含む罰則が定められている行為に当たる。
喫煙行為についても、片手での運転となったこと、そして、これらの行為が3日間の間に繰り返し行われており、以前から繰り返し行われていたことが推認される。
会社においては、年に3回、運転中のスマホ操作を禁じる旨を含む研修を実施しており、本件の運転士もスマホ操作により懲戒解雇がされた事例があることも知っていたにもかかわらず、スマホ操作及び喫煙を繰り返していた。
これらに照らすと、運転士がスマホ操作や喫煙について注意を受けたことがなかったことなどを考慮しても、本件解雇につき、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当性を欠くということはできない。 懲戒解雇は有効と判断。

本件では、「業務中に行われた刑事罰の対象となる行為 」であるうえ、「会社が年3回、運転中のスマホ操作を禁じる内容を含む研修を実施」+「他の運転士がスマホ操作により懲戒解雇がされた事例を周知していた」という事情が懲戒解雇の有効性を支えました。
回送中のことではありますが、刑事罰の対象になる行為を業務中に行っており、「初回発覚で懲戒解雇は重すぎる」という主張は、基本的に通用しない理屈だと思います。注意を受けるまでもなく、法令で禁止されているからです。
ただ、他の裁判例もみると、「業務中に行われた刑事罰の対象となる行為 」でも、その内容が軽微であることなどを指摘して、懲戒解雇無効とされる例もありますので、注意が必要です。例えば、東京地裁R4.9.2は、自動車販売会社において、従業員が業務時間中に社用車を無免許運転した事案ですが、懲戒解雇が無効とされています。

会社に1000万円超の損害発生でも身元保証人は“責任なし” 高裁判決は会社の説明不足を指摘!前のページ

「全部他人のせい」攻撃的言動繰り返す社員。9年指導でも改善せず、ついに解雇は有効か?【東京地裁】次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    適格退職年金から中退共への移行

    東京高裁R6.8.28適格退職年金制度を前提に退職年金規程を…

  2. 判例・裁判例コラム

    会社の要請に反する行動を理由とする降格

    仙台高裁R5.1.26基本給=等級給+評価給と定め、等級給は等級に応…

  3. 判例・裁判例コラム

    大声で非難する発言を理由とするけん責処分

    東京地裁R6.6.27学校法人において、養護教諭の業務負担が過剰であ…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    代表者からトラブルを問いただされて出勤しなくなった従業員。退職済みと扱ってよい?…
  2. 判例・裁判例コラム

    65歳まで継続雇用されるためには定年前に退職することを要する制度は高年法違反?
  3. 判例・裁判例コラム

    体育授業で小6女児の両肘に数十秒接触。セクハラで懲戒免職された教諭の運命は?【横…
  4. 判例・裁判例コラム

    解雇事由調査のための休職命令と賃金支払義務
  5. 判例・裁判例コラム

    雑に作成された退職時の秘密保持誓約書が無効と判断された例
PAGE TOP