判例・裁判例コラム

白血病が寛解した社員の復職。主治医と産業医、どちらを優先すべき?裁判所の判断

東京地裁R7.2.18
病院内の清掃業務等に従事していた従業員が、急性前骨髄球性白血病を発症。大学病院に緊急入院して寛解し、復職を希望した。
血液内科の主治医は、復職可能、就業時間短縮は不要、残業制限なしと意見。
一方、産業医は、復職自体は可能、ただし病院内清掃業務は感染症リスクがある、安全配慮義務の観点から職場異動が必要と意見を述べた。
会社は、主治医と産業医の意見が異なる以上、より安全な方を選択するという観点から、従業員を配置転換し、倉庫での在宅介護用品の商品管理業務を命じた。
これに対し、従業員は倉庫業務は暑いときは室温が38度に達するなど劣悪な環境であり追い出し部屋として利用されていると主張。
病院内清掃業務での復帰を求め、配転命令が無効であることの確認を求めて訴訟提起。
→本件配転命令発令時点において、本件産業医について、その資格や能力等の点について問題があることをうかがわせる具体的な事情があり、かつ、それを会社が認識していたことを認めるに足りる証拠はない。
これを踏まえれば、安全配慮を考慮して配転命令をした会社の判断には業務の必要性が認められる。
従業員は、血液内科の専門医である主治医の意見に対し、産業医意見のいう感染症のリスクは、医学的・具体的に考えれば現実化する可能性の極めて低いものであり現実離れしたものであるなどと主張する。
しかし、本件産業医について、資格や能力等の点について問題があることをうかがわせる具体的な事情が存在し、かつ、それを会社が認識していたという証拠はないのであるから、会社において、限られた時間の中で、主治医意見と産業医意見のいずれが正しいか判断することは事実上困難であったというべきであり、従業員の主張は前提において理由がない。
そして、本件配転命令が不当な動機・目的をもってされたとは認められない。
また、従業員が勤務する倉庫には空調が設置されていないが、この会社の他の倉庫も空調が設置されていないところがほとんどであり、従業員だけが空調が設置されていない倉庫で業務をさせられているわけではないし、大型扇風機の設置やファンベストの貸与などの対策がとられている。
配転命令が従業員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるとは認められない。
配転命令は有効と判断。

復職後も意味不明な言動が続く社員。再休職命令は有効?裁判所の判断!前のページ

障害者雇用だと何も注意できない?「くしゃみするときは手を当てて」と指導した会社に、職員は合理的配慮義務違反と主張。裁判所の判断は!次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    作業中にスズメバチに刺された事故は使用者の安全配慮義務違反?

    東京地裁R5.9.29公園の植栽管理に従事する職員がスズメバチに刺さ…

  2. 判例・裁判例コラム

    約半月にわたる無断欠勤について労働者が賠償を命じられた事例

    東京地裁R7.2.27ウェブサイトの制作等を事業とする会社の労働者が…

  3. 判例・裁判例コラム

    労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例

    宮崎地裁R6.5.15平均月56時間の時間外労働をしていた係長が突然…

  4. 判例・裁判例コラム

    キャバクラ嬢は労働者?割増賃金請求できるのか?

    東京地裁R7.6.25キャバクラ嬢(キャスト)が自分は業務委…

  5. 判例・裁判例コラム

    「転勤したくないなら給料15%カット」は違法? 東京地裁の判断!

    東京地裁H25.3.26 全国、海外に事業所をもつ医薬品製造会社が、…

  6. 判例・裁判例コラム

    日報を提出しない従業員に対するけん責処分

    東京地裁R6.5.30営業所長の再三の提出指示にもかかわらず、営業日…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    仕事が同じなのに契約社員の基本給が正社員より3割低いのは違法?大阪高裁の判断!
  2. 判例・裁判例コラム

    就業規則に配転条項があっても職種限定契約であるとされた例
  3. 判例・裁判例コラム

    白血病が寛解した社員の復職。主治医と産業医、どちらを優先すべき?裁判所の判断
  4. 判例・裁判例コラム

    営業活動に他の業者を帯同させた営業社員が減給処分!処分は有効?東京高裁の判断
  5. 判例・裁判例コラム

    特別退職金1254万提示しても整理解雇はできない?“配置転換の本気度”が問われた…
PAGE TOP