判例・裁判例コラム

復職後も意味不明な言動が続く社員。再休職命令は有効?裁判所の判断!

大阪地裁R2.7.9
適応障害で休職していた従業員が、主治医に復職可能と診断されて復職。
しかし復職後、
・周囲が静かなのに、周りの会話や梱包の音が気になって業務に集中できないと訴え、集中できた時間とできなかった時間を色分けした表を作成して産業医との面談で提出する
・成果物の提出を指示すると、成果物の定義が不明であると主張して提出を拒む
・復職後に行った内容を把握できるものを提出するよう指示すると、課題のキーワードが「金星」と「雷」であるという意味不明なメモを提出する
・他の社員の入退室や会話内容、トイレ休憩の時間帯に女子トイレに誰がいたかをノートに記録する
・上司が業務報告を求めると理解困難な報告をする
など、会社から見ると不可解な言動が続いた。
会社は、適応障害の再発や他の精神疾患の発症を疑い、産業医と面談させたが、産業医は、「今、病気の症状は感じられなかった。現時点で、僕が就業制限とかアクションを起こすことはない。」旨述べた。
しかし、会社は、就業規則に定めた休職事由である「私傷病により長期に欠勤が見込まれるとき」またはこれに準ずる事情があるとして私傷病休職を命じ、その後、休職期間満了により退職となった旨通知した。
→休職命令発令にあたっては、必ずしも医師の確定診断が必要とまではいえない。また、会社が、適応障害再発等の可能性があると考え、改めて専門医の診断を受けるように求めることは、合理的かつ相当な措置といえる。
しかしながら、復職後に従業員の欠勤が続いていたわけではなく、従業員には入社当初(適応障害と診断されて1回目の休職に至る前)から、同様の言動・トラブルが見られた。
会社も、復職後の言動が、1回目の休職の時点で発症していた適応障害等の精神疾患が治癒していないためなのか、それとも傷病ではなく従業員のパーソナリティに由来するものか判断しかねたと述べている。
さらに、産業医は、時短勤務や勤務配慮の必要がないという趣旨の意見を述べており、これを前提とすると、仮に何らかの精神疾患を発症していたとしても、時短勤務等の必要もない状況であった。
従業員が私傷病により長期に欠勤が見込まれる、又はそれに準ずる事情があると認めることはできないから、休職命令は要件を満たさず、無効。
よって、休職期間満了による退職扱いも無効。
労働契約上の地位を確認し、会社に約900万円の支払命令。

休職命令については以下でも解説していますのであわせてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/2476.html

休職発令の失敗事例です。
医師が就業可能であるとしているのだから、健康状態としては就業可能なことを前提に、指導し、改善できなければ退職勧奨・解雇を検討すべきでした。
休職発令について、裁判官執筆の書籍「労働関係訴訟の実務」第2版(白石哲編著)には、
休職事由が就業規則所定の長期欠勤期間ではなく、「業務支障等」である場合、休職が解雇猶予の性質を有する以上、それは解雇事由に相当する内容でなければならない(246ページ)
と解説されています。
休職発令時は、この点を正しく検討して要件を満たすかチェックすることが必要です。
7月28日のYouTubeライブの質問にもありましたので、取り上げようと思います。

固定残業代を廃止して実労働時間に応じた残業代の支払に変更!不利益変更だが有効とした東京地裁判決!前のページ

白血病が寛解した社員の復職。主治医と産業医、どちらを優先すべき?裁判所の判断次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  4. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  5. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

アーカイブ

PAGE TOP