判例・裁判例コラム

早出残業の残業代請求が認められた事例

仙台高裁R5.11.30
歯の補綴物及び義歯の製作等を業とする株式会社で歯科技工士として勤務する従業員が残業代請求。始業時刻より前に出社して、会社からの明示又は黙示の指示に基づき、仕事を行い、また、業務を遂行する上で不可欠な技術訓練を行っていたと主張。始業時刻前の時間についても割増賃金の支払いを求めた。
→従業員が主張する作業や技術訓練を行うには、ある程度まとまった時間がないと意味をなさないと考えられる。午前8時30分の定時よりも相当早い午前6時、7時前後の出勤も少なくなく、定時より1時間を超えて早く出社している日については、会社の業務に従事するために、明確な目的をもって早出したものとみるのが自然であり、これらの日については、出勤時刻から定時の始業時刻まで時間外労働に従事していたと判断。一方、それ以外の日については、従業員の出社時刻に規則性がなく、定時とそれほど違わない午前8時頃の出社も多いことなども考慮すると、始業時刻前の時間は労働時間とはいえないと判断。

労働判例1318号

就業規則による民法536条2項の適用排除が認められた例前のページ

マクドナルドの店長の管理監督者性次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    自宅待機中の従業員に対する出社命令

    東京地裁R6.4.24嫌いな人物はとことん追い詰める、高圧的な態度で…

  2. 判例・裁判例コラム

    部下3名(正社員1名、派遣社員2名)の部長の管理監督者性

    東京地裁R6.3.28太陽光発電システムの設計、販売等を事業とする会…

  3. 判例・裁判例コラム

    相手を論破するような話法を多用する新入社員の解雇

    東京地裁R2.9.28産業用機械の制作、販売等の事業を営む会社が、2…

  4. 判例・裁判例コラム

    正社員に寒冷地手当を支給するが契約社員には支給しないことは違法?

    東京地裁R5.7.20日本郵便が正社員には寒冷地手当を支給するが契約…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    配転命令を受けた従業員からの職種限定合意の主張が認められなかった事例
  2. 判例・裁判例コラム

    午前9時を始業時刻とする会社で午前8時より前にタイムカードがされていた場合の早出…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

    判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 判例・裁判例コラム

    半期ごとの業績評価により賃金を最大2割減額する規定の効力
  5. 判例・裁判例コラム

    役職手当を固定残業代と定める規定の有効性
PAGE TOP