判例・裁判例コラム

就業規則による民法536条2項の適用排除が認められた例

函館地裁S63.2.29

タクシー会社が人身死亡事故を起こした乗務員を、刑事事件についての裁判所の判断が出るまでの期間「特別休職処分」とし、期間中は無給とした
→就業規則で「会社が特に休職とすることを必要と認めたときは、特別休職を命じることができる。」とされ、その期間の給与については「その都度決定する」とある。本件の特別休職処分は、死亡事故を起こしたタクシー運転手を司法機関の処分未了の間に営業車に乗務させることによる利用者の不安を避けることを目的としたものと一応認められる。このような目的に基づき、経営者の判断として、司法機関の処分が出るまでの間と期間を定めてなされた特別休職処分は無効とはいえない。そして、就業規則が、期間中の給与について「その都度決定する」と定めたのは、特別休職期間中の給与について、任意規定である民法536条2項の適用を排除する趣旨を含む。しかし、強行規定である労働基準法26条は適用されるから、会社は特別休職処分の期間中、平均賃金の6割の休業手当の支払義務を負うと判断

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