大阪地裁R6.11.21
ホテルを経営する会社が1か月程度の間にミス5件を起こし、また事実と異なる説明を繰り返した有期雇用の従業員を雇止め。
この従業員は、1か月程度の間に、
①電話料金を支払済みの宿泊客に誤って未払い請求してクレームを受ける
②マッサージ料金の部屋付け処理を怠って会社に損害を発生させる
③宿泊客から依頼されたモーニングコールの手配を忘れてクレームを受ける
④チェックインした宿泊客を同姓の別の宿泊客の部屋に案内し、客同士が客室で鉢合わせになる
⑤宿泊客から依頼されて客室に行った際に客室管理事務所の鍵を客室に置き忘れた という問題があった。
また、マッサージ料金処理について事実確認をされた際に、関与していない上司の名前を出し、客の個人情報の書類を処理していないのに「処理した」と答える等虚偽の説明をした。
会社は、この従業員の契約更新にあたり、役割区分を下げて給与を下げる提案をしたが、従業員は応じなかったため、契約を更新せずに雇止めした。
→従業員は当初1年間の有期雇用で採用された後、半年ごとに4回の更新がされている。従業員が従事していた業務内容の常用性に加え、労働契約の更新回数や通算期間、会社において雇止めの前例があったことがうかがわれないことを考慮すると、従業員において契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があったと認められる。よって、雇止め法理が適用される。
そして、確かに、従業員は、1か月程度の間に立て続けに業務上のミスをしており、その中でも客室管理事務所の鍵の紛失は事故報告書を作成する事態に至ったものであって、これらのミスは、決して軽視できるものではない。
他方、従業員は、令和2年度の業績評価において積極的な評価を受けており、令和3年度の業績評価においても、健康診断の不受診の問題等が指摘されたものの、接客態度について積極的な評価も受けていている。従業員は、以前は報告書を提出するような大きなミスをしていなかったところ、業務内容がそれまでキャリアを積んできたロビーサービス業務から未経験のフロントレセプション業務に変更され、慣れない業務に当たっていたことも、ミスを起こした原因であったと考えられる。さらに、役割区分を下げる提示をした面談において、仕事ができていないとの指摘がされているところ、本件面談以前に会社がこの従業員にフロント部門の職務と職責の自覚を促し、改善の機会を与えたことはなかった。加えて、本件面談当時、契約期間が約半分残っていたことを考慮すると、改めて指導を行った上で、改善の状況を見極めることが相当であったというべきであって、本件面談の時点で、労働契約を同一条件で更新する可能性を否定して従業員が大きな不利益を被るような変更提案をする合理的な理由があったということはできない。
そして、従業員は、本件面談後、最終出勤日までの約2か月の間、報告書を作成するような業務上のミスをしたことはなかった。このほか、会社において従業員をフロント以外の部署に配置する可能性を具体的に検討したことをうかがわせる証拠もない。
雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから無効と判断。約500万円のバックペイ支払命令。
業務で虚偽報告があった場合の会社側の対応については以下でも解説していますのであわせてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/4791.html
企業側から見たポイント
雇止めのリスクを軽く見て失敗した事例という印象を受けます。
業務に関して虚偽の説明をする、 自分のミスを上司のせいであるかのように偽る、
といったことは当然許されることではありません。
ただ、そのような虚偽説明に対する対応も、
本人の立場(管理者なのか一担当者にすぎないのか)や虚偽説明の悪質性に照らして、適切なものである必要があります。
会社に重大な損害を与えるような嘘や、法令違反につながるような嘘でない、本件のような一担当者の虚偽説明は、嘘をついたから役割を下げる、それに応じなければ雇用を終了するというのではなく、嘘をついたところから指導のはじまりだと思って臨む必要があります。





