判例・裁判例コラム

「試用期間」を1か月ごとの有期契約にして雇止めすれば、解雇予告手当は不要? 裁判所は「実質は解雇」と判断!【東京地裁】

東京地裁R8.3.27
出版社が「雇用形態:正社員、期間の定め:無、試用期間:有(3か月)」という条件で求人。
しかし、契約書では「試用期間中は1か月ごとの有期雇用とし、期日までに再契約を結ぶこととします」と記載し、その後1か月ごとに有期雇用契約書を作成。
3か月の試用期間が満了した後、雇用終了を告知した。
→会社は試用目的の3か月間をさらに3分割しており、必要以上に期間を細分化していることなどを考慮すると、このような形式を採用しているのは、雇用を継続しないこととした場合に、解雇ではなく期間満了により雇用契約関係を容易に終了させることができ、解雇予告手当の支払を要しないといった便宜的な事情によるものにすぎないと推認される。試用目的の3か月間は、契約の存続期間ではなく、試用期間であり、契約終了を告知したことは解雇の意思表示と解し得る。
そして、会社は契約終了を告知した理由としてコミュニケーション能力の問題やスキル不足などを主張するが、これらの主張に的確な証拠はない。雇用終了は無効と判断。雇用契約の継続を確認し、会社に支払命令。

企業側から見たポイント
本件では、労働者が1か月ごとの有期契約書に3回署名押印していたにもかかわらず、無期雇用契約と判断されました。
会社が正社員・期間の定めなしという条件で求人していたことに加え、3か月の試用期間をあえて1か月ごとに細分化していたことなどから、有期契約という形式は、解雇規制を回避し、解雇予告手当の支払を不要とするための便宜的なものにすぎないと判断されています。
このような判断は、
使用者が労働者を新規に採用するに当たり、労働者の適性を評価・判断する目的で雇用契約に期間を設けた場合、その期間の満了により雇用契約が当然に終了するという明確な合意が成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、その期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であるとする最高裁判決(最高裁H2.6.5)の考え方を踏まえたものです。
試用目的で有期雇用契約を締結する場合は、契約書に有期契約と記載するだけでは足りません。
期間満了によって雇用契約が当然に終了することについて明確な合意を成立させる必要があり、そのためには、求人条件との整合性を確保し、また、期間満了後の取扱いについて書面で明確な合意をしておくことが重要です。

休職者の復職判断で、指定医は復職不可と診断。それでも裁判所は復職を認めなかった会社の判断を否定!東京地裁前のページ

上司への無礼なメールで懲戒処分!会社は何を間違えた?次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    従業員が懲戒通知を“受取拒否”。懲戒の効力は? 東京地裁の判断!

    出勤停止の懲戒処分通知書を従業員が返送した場合の効力東京地裁R6.4…

  2. 判例・裁判例コラム

    事故弁償金を運転手の給与天引き! 同意書があっても違法!札幌地裁の判断

    札幌地裁R8.3.25 運送会社が事故を起こしたドライバーの給与から…

  3. 判例・裁判例コラム

    退職直前にメール約180通を削除した退職者の損害賠償責任

    神戸地裁R7.9.19営業部長兼営業担当取締役が退職直前の3…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    裁量労働制であれば生活リズムが整っていなくても復職できる?
  2. 判例・裁判例コラム

    事故3回の運転手を「診断書が出るまで乗務停止」。それは事実上の解雇か?東京地裁の…
  3. 判例・裁判例コラム

    雇用契約書に明記した固定残業代の主張が認められなかった事例
  4. 判例・裁判例コラム

    東京地裁H28.10.7
  5. 判例・裁判例コラム

    不備のある定額残業代を就業規則変更によって有効にできる?
PAGE TOP