判例・裁判例コラム

加害者本人に話を聞かず「ハラスメントなし」認定!大学に損害賠償命令

山口地裁R8.1.28
大学講師が教授からハラスメントを受けたとして調査委員会に申立て。
大学は、被害を訴えた講師や関係者からは事情聴取をしたものの、加害者とされた教授本人には事情聴取をしないまま、「ハラスメントには該当しない」と結論付けた。
講師は大学の安全配慮義務違反を主張。しかし、大学側は、 「講師が申し立てた各行為はハラスメントにあたらないと判断したため、教授に対する事実関係の聴取を実施しなかった」と説明。
→調査委員会が正確な事実関係を把握する必要があると判断したうえで、教授に聴取をしないまま関係者に対する調査のみを実施するというのは、その調査方法において理解に苦しむというべきであり、合理的な理由は見いだせない。
あらゆる場合に行為者に対して事実関係の聴取を実施すべき義務がないのは明らかであるが、事実関係を把握する必要があると判断した以上、一方当事者である行為者に聴取する義務が生じる。
ハラスメントに該当しないとの判断は、一定の事実関係の認定を前提としているのだから、その結論をもって聴取をしないことを正当化できない。 本件調査委員会が行った調査の方法は安全配慮義務に違反し、これによって、講師が適切な職場環境で職務を行う利益を侵害した。
大学に損害賠償命令。

ハラスメント調査の注意点については以下でも解説しています。併せてご参照ください。
https://youtu.be/IOcXCB328UQ?si=2ehFGEohAFz_Jfr9

被害者や関係者に聴取しただけで、行為者に聴取しないままハラスメントに当たらないと結論づけたことが違法とされました。
この裁判例によれば、被害者の申告内容をすべて真実と前提にしても、ハラスメントに該当しないことが明らかな場合には、関係者や行為者への聴取は必ずしも必要ではありません。
もっとも、ハラスメント該当性は、言動の内容だけでなく、その経緯や状況、当事者間の関係なども踏まえて判断されるものです。そのため、「被害者の申告内容を前提としてもハラスメントに当たらない」と判断できるかどうかについても、経緯や状況、当事者間の関係なども確認したうえで検討する必要があります。
そして、その検討の結果、事実関係を確認するために関係者へのヒアリングなどの調査が必要であると判断した以上は、行為者本人にも事情を聴取し、双方の説明を踏まえて事実認定を行わなければなりません。 特に経緯や状況、当事者間の関係については、被害者・関係者への聴取だけでは判断できないことが多いと考えられます。調査が必要であると判断したのに、行為者への聴取を行わずに、関係者のヒアリングだけでハラスメントに当たらないと結論づけることは許されません。

就業規則と評価制度はOKでも個別評価がズサン →降格も給与減額も全部無効!会社敗訴の高裁判決前のページ

はじめての就業規則で定年制を新設→無効とされバックペイ約8700万円!東京地裁の判断の理由とは?次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    復職後も意味不明な言動が続く社員。再休職命令は有効?裁判所の判断!

    大阪地裁R2.7.9 適応障害で休職していた従業員が、主治医に復職可…

  2. 判例・裁判例コラム

    配転命令を受けた従業員からの職種限定合意の主張が認められなかった事例

    大阪地裁R5.3.31製造業で30年以上システム課で勤務していた従業…

  3. 判例・裁判例コラム

    給与ダウンが不満で出勤拒否 →懲戒解雇は有効とされた判決

    大阪地裁R1.12.10派遣会社が、エンジニアを派遣社員として月給5…

  4. 判例・裁判例コラム

    美容師の退職後の競業避止義務違反に6万円の賠償命令!東京地裁の判断の理由とは?

    東京地裁R7.3.26表参道で美容院を営む会社が、自社店舗と他社から…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    無期転換したのに格差そのまま? →裁判所「違法とはいえない」と判断
  2. 判例・裁判例コラム

    事業承継で引き継いだ就業規則が実は無効? 退職金不支給で会社敗訴!
  3. 判例・裁判例コラム

    私傷病休職の期間を会社の判断で延長できる?
  4. 判例・裁判例コラム

    就業規則に定められた定年延長手続をしないまま、定年後も勤務を続けさせた場合の判断…
  5. 判例・裁判例コラム

    会社が60年以上続けていた従業員への年3000円の支給を中止したことが争われた事…
PAGE TOP