判例・裁判例コラム

有給休暇前に作業の期限確認も引継ぎもしなかったのは懲戒事由? 従業員は「有給休暇は労働者の権利」と反論。 東京地裁の判断!

東京地裁R8.1.30
6月25日ごろ、従業員は依頼を受けていた図面修正の作業につき、期限を確認せず、作業を完了しない状態のまま、引継ぎ等をせずに有給休暇を取得。
期限がその有給休暇中であったため、同僚が代わってその作業をした。
また、有給休暇明けの6月28日に、取締役からこの点について口頭で指導を受けたが、有給休暇は労働者の権利であり、有給休暇を取得しないようにするのは強制なのか、強制ではないのかはっきりしてほしい旨述べて反論した。
→作業を期限内に完了するという自己の職務を遂行せず、「責任を重んじ、職務を誠実に遂行すること」を「守らなければならない」とする就業規則に違反する。
また、作業の期限が不明確であった原因は、作業を依頼した側にもあるとはいえるが、従業員は、作業を期限までに完了させず、同僚への引継ぎ等もしなかった自己の非を認めず、むしろ、有給休暇の取得を制限されたかのような的外れな反論をしている。
自己の言動を省みて改善する姿勢はうかがわれない。
このことからすれば、「勤務怠慢、素行不良にして改悛の見込みがないとき」及び「その他前各事由に準ずる程度の行為があったとき」の懲戒事由にもそれぞれ該当すると判断

企業側から見たポイント
ポストの判断は、この裁判例の争点の一部にすぎませんが、他にみない判断のように思ったので、あまり一般化できないような気もしますが、とりあげてみました。
事件としては、業務命令に従わないなど他の懲戒事由もあり、会社はこれらの懲戒事由もあわせて、この従業員を懲戒解雇しています。これに対し、従業員が地位確認請求訴訟を起こしました。 この懲戒解雇は重すぎるとして無効とされましたが、懲戒解雇と同時にされた予備的な普通解雇が有効とされ、地位確認請求は認められませんでした。
同時に予備的な普通解雇をやっておいたことが、会社を救ったともいえる事案です。
懲戒解雇をするときは、その効力について確かな自信がある場合を除き、予備的な普通解雇も同時にやっておくことをおすすめします。 西川執筆の「就業規則・関連書式作成ハンドブック」の1170ページでは、懲戒解雇にあわせて予備的な普通解雇を行う場合の書式例を掲載して解説していますので、お持ちの方はあわせてご参照ください。

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