判例・裁判例コラム

管理監督者性が否定された場合は役職手当を固定残業代として扱う旨を定める規定の効力

静岡地裁沼津支部R5.3.27
社会福祉法人が賃金規程で施設長には5万円、役職者には1万円から3万円の役職手当を支払うと定めた。そのうえで、賃金規程で、この役職手当について「但し、例外的に、労働基準法41条の2に定める監督又は管理の地位にある者と認められない場合は、本手当に当月分の時間外労働手当、休日労働手当を含むものとし、実際の額が本手当を超えた場合は、超えた分について支払う。」と規定
→役職手当は、役職に応じて金額が異なり、役職が上位になるほど増額されているから、役職の職責に対して支払われる趣旨も有していると解される。そして、賃金規程の文言上、役職の職責に対する対価として支給される部分と、時間外労働に対する手当として支給される部分の区分が明瞭でない。よって、役職手当の支給により時間外労働又は休日労働に対する割増賃金が支払われているということはできないと判断

労働判例1323号

訴訟をすれば有給休暇の時効がとまる?前のページ

労働者の適性を判断する試用目的での有期雇用契約次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    裁量労働制であれば生活リズムが整っていなくても復職できる?

    東京地裁H29.11.30出版社の編集職として裁量労働制で勤務する従…

  2. 判例・裁判例コラム

    採用内定後のバックグランドチェックの結果に基づく内定取り消し

    東京地裁R6.7.18外資系のコンサルティング会社が採用内定…

  3. 判例・裁判例コラム

    就業規則に不備があれば退職金2回もらえる?

    大阪地裁R6.11.7出版会社が、就業規則で定年を60歳と定…

  4. 判例・裁判例コラム

    調剤薬局で患者の感情を害する言動をする薬剤師を解雇した事案

    大阪地裁R6.2.22調剤薬局が経験者の薬剤師を採用。履歴書には「前…

  5. 判例・裁判例コラム

    雑に作成された退職時の秘密保持誓約書が無効と判断された例

    東京地裁R6.2.19退職する従業員に、「退職後3年間は、貴社所属時…

  6. 判例・裁判例コラム

    マクドナルドの店長の管理監督者性

    マクドナルドの店長の管理監督者性東京地裁H20.1.28店長…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    会社がずさんな秘密保持誓約書の提出を求めたことが会社の請求を認めない理由の1つと…
  2. 判例・裁判例コラム

    レジから2000円をとった美容師の普通解雇
  3. 判例・裁判例コラム

    協調性欠如などの問題がある従業員に年賀状の宛名シール貼りを1日1000枚のペース…
  4. 判例・裁判例コラム

    懲戒解雇を社内で公示したことが名誉毀損にあたる?
  5. 判例・裁判例コラム

    売上額に応じて支給される業績給は労基法施行規則19条6号の出来高払制賃金にあたる…
PAGE TOP