判例・裁判例コラム

「定年後だから賞与は安くていい」は通用する? →名古屋高裁、定年前との賞与格差を“違法”と判断

名古屋高裁R8.2.26 名古屋自動車学校事件(差戻控訴審)
自動車学校で定年後の嘱託職員の賞与について、定年前正職員の4割程度を支給。
嘱託職員が、定年前と仕事内容は同じであり、格差は違法と主張した。
→正職員の賞与には、基本給に正職員一律の掛け率を乗じて算定されている部分があり、この部分については賃金の後払い的性質がある。  そして、嘱託職員の賞与も在籍中、各季に支給されていることや勤務成績がどのように反映されて判断されたのかは明らかではないことを踏まえると、同様に賃金の後払い的性質を持つ。
そうすると、
①定年後は、役職に就くことが予定されていないこと以外には、 定年前と職務内容や人事異動の範囲が同じであること
➁正職員賞与と嘱託職員賞与はいずれも功労褒賞的な性質を持つこと、
③会社の誠実さを欠く対応により、嘱託職員の賞与について組合と具体的な協議がされていないこと、
④定年前後で、賞与や賃金総支給額に大きな差があること を踏まえると、
⑤嘱託職員の賞与には、正職員の賞与とは異なり、 将来の労働への意欲向上という支給の目的が含まれず、定年で基本給が減額されたことに伴う生活補償的な側面があること、
⑥嘱託職員が65歳までの5年間しか雇用が予定されていない上、定年退職時に退職金を受領するとともに、高年齢雇用継続基本給付金や年金の受給が予定されていることなどを考慮しても、
嘱託職員時の賞与が原告Aについては10万円に各季の正職員の賞与の掛け率を掛けた額、原告Bについては9万5000円に各季の正職員の賞与の掛け率を掛けた額を下回る限度で、正職員定年退職時の賞与と嘱託職員時の賞与の格差は不合理。
賞与格差について会社に賠償命令。

賞与の格差は、判断が難しいですね。
長澤運輸事件では、
・定年後も正社員と同じ運転業務に従事
・正社員には基本給の5か月分の賞与を支給
・定年後の嘱託社員は賞与なし
→基本給の5か月分というかなり大きな格差ですが、最高裁は、このような賞与の格差も違法ではないと判断しました。
しかし、名古屋自動車学校では、ポストのとおり、4割支給でも違法というの高裁判断です(年収ベースでは、名古屋自動車学校のほうが格差が圧倒的に大きいという事情はありました)。

シフト未確定なら有給は取れない?→裁判所『そもそも就労義務なし』と判断前のページ

「発達障害を隠して入社」 障害を知った直後に解雇した事案! 横浜地裁の判断!次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    定年後は仕事が同じでも給与は半分以下!名古屋高裁が会社に賠償命令!

    名古屋高裁R8.2.26 名古屋自動車学校事件(差戻控訴審)自動車学…

  2. 判例・裁判例コラム

    上司とトラブルが絶えない従業員に対する退職勧奨が違法とされた例

    東京地裁R5.12.7 会社代表者が、従業員に対し、上司の業…

  3. 判例・裁判例コラム

    退職直前にメール約180通を削除した退職者の損害賠償責任

    神戸地裁R7.9.19営業部長兼営業担当取締役が退職直前の3…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    職場内の人間関係を理由に休職者の復職を認めないことは可能?
  2. 判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例②
  3. 判例・裁判例コラム

    結婚の予定を聴くのはハラスメントか?50歳男性社員に対する減給処分。東京地裁の判…
  4. 判例・裁判例コラム

    年功序列的賃金制度から成果主義的給与体系への就業規則変更を行った事案
  5. 判例・裁判例コラム

    定年前の業務命令違反について定年後に懲戒処分できる?
PAGE TOP