判例・裁判例コラム

パワハラ被害について自ら対応し、会社による対応を希望しないと言われた場合の使用者の義務

大阪地裁R6.9.12

派遣社員が派遣先のプロジェクトマネージャーの言動に問題があるとして、派遣先におけるプロジェクトマネージャーの上司に申入れをした。そのうえで、派遣元の社長にも、派遣先でパワハラを受けていると電話で報告。派遣元の社長は、パワハラの解決を願うなら出来事を時系列で並べて書面化して送ってほしいと述べたが、派遣社員は書面を送付しなかった。派遣社員は、その後、うつ病を発症し、労基署はこれが上司からの一方的な非難や脅迫的な言動によるなどとして労災認定。派遣社員は、派遣元がパワハラの事実を聞いたにもかかわらず、何らの措置も講じなかったことは、安全配慮義務違反であるとして、派遣元に損害賠償を請求した
→派遣社員は、派遣元の社長に派遣先においてパワハラを受けていることを述べるも、自らで対応することとし、派遣元による対応を希望しない旨を述べていた。従って、派遣元が派遣先に対して積極的に環境改善を働きかけるべき義務があったということはできず、派遣元に安全配慮義務違反があったということはできないと判断

実質個人経営の居酒屋を経営する会社代表者の責任前のページ

会社が労災の事業主証明を途中から拒否するようになったのは不法行為?次のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    始業前の制服への着替え時間が労働時間にあたることが否定された事例

    東京地裁R5.4.14ビルにおいて設備機器の操作・保守を行う設備員が…

  2. 判例・裁判例コラム

    実質個人経営の居酒屋を経営する会社代表者の責任

    東京地裁R5.3.23居酒屋で勤務する33歳の従業員が突然死…

  3. 判例・裁判例コラム

    朝礼で職員同士が仲が悪いと発言した代表取締役の不法行為責任

    東京地裁R6.11.13代表取締役が朝礼において、全職員の前…

  4. 判例・裁判例コラム

    夏季休暇が「休日」なのか「休暇」なのか、が争点になった裁判例

    東京地裁H30.7.18就業規則で土日祝と年末年始を所定休日と定めて…

  5. 判例・裁判例コラム

    職場内での悪影響を理由に復職不可とできる?

    横浜地裁H30.5.10うつ状態と適応障害で休職中の職員について主治…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    過半数代表選出にあたり無投票者は有効投票にみなすと定めた場合の効力
  2. 判例・裁判例コラム

    どのくらいの時間数の副業なら本業に支障を生じさせると認められる?
  3. 判例・裁判例コラム

    メンタル休職から復職して21か月後の秋田への転勤命令
  4. 判例・裁判例コラム

    事業者は従業員に対する労災支給決定の取り消しを求める訴訟を起こすことができるか?…
  5. 判例・裁判例コラム

    変形労働時間制採用のために就業規則に260ページにわたる別表を設けてシフトパター…
PAGE TOP