判例・裁判例コラム

「障害があるから在宅勤務で復職」は認められる? 合理的配慮の主張を東京地裁が否定!

東京地裁R7.8.6
脳梗塞で左半身麻痺の障害を持ちながらも9年以上出社勤務していた従業員が、コロナ禍による緊急事態宣言を受けてリモートワークとなった。
その後、左足の手術が必要になり、休職。退院後に診断書を提出して復職を求めた。診断書には、「以前、左片麻痺の状態でも通勤できたため、今後は回復時間を設ければ通勤ができる見込みが高い。現在数百メートルは歩けるため、復職の可否は職場の判断と考えている。」とあった。
しかし、会社はすぐに復職を認めず、10か月後になってようやく復職を認めた。
これに対し、従業員は診断書を提出した時点で復職が認められるべきだったと主張して10か月分の賃金の支払を求めて訴訟提起。
会社の在宅勤務規程には、以下の規定あり。
第3条 在宅勤務の対象者は、次の各号の条件を全て満たし、その他業務を遂行する上で問題がないと会社が判断し許可した者とする。
〔1〕在宅勤務を希望する者
〔2〕自己管理、時間管理ができる者
〔3〕上司が認めた在宅勤務可能な業務が実施できる者
2 前各号にかかわらず、緊急事態時などで在宅勤務が必要であると判断される場合は、会社が在宅勤務を指示することができる。
→従業員は、休職前にクライアント会議の席上で急に声を上げて机を叩くことがあったこと、ミスが多かったこと、業務中に同僚と揉めることもあったことなど勤務態度や業務遂行能力についての問題があり、人事評価も低く、「自己管理や時間管理ができる者」(在宅勤務規程3条1項2号)や「上司が認めた在宅勤務可能な業務が実施できる者」(同項3号)との要件を満たしていたとはいえない。
また、従業員は、かつてリモートワークをしていたが、これは、あくまでコロナ禍における緊急事態宣言を受けた例外的な措置であるから、復職が認められるためには、出社できる状態にあったことが必要である。
従業員は、障害者に対する合理的配慮の観点から出社の可否を考慮すべきではないと主張するが、在宅勤務規程3条1項の在宅勤務対象者に該当しない以上、障害者に対する合理的配慮の必要性を踏まえても、出社できる状態でなければ、復職可能とは認められない。
そして、従業員は片麻痺があるため、公共交通機関での出社は困難であったところ、会社に、自動車通勤を認めてほしい旨のメールを送信している。
しかし、会社は自動車関連の事業を営んでおり、運転による過労や事故の危険を考慮し、自動車通勤を認めていないところ、これは不合理とはいえないし、従業員は足に傷病を抱えており、事故の危険性をより心配したことも不合理とはいえない。
診断書を提出した時点では復職可能な健康状態であったとはいえないと判断し、請求認めず。

実際に同じ状況で会社から相談を受けて対応する場面では、判断に迷うかもしれないと思いました。
裁判所は、在宅勤務に入る前の約9年間の出社勤務での就業状況も細かく認定したうえで判断しています。
これは在宅勤務規程で在宅勤務対象者を「自己管理、時間管理ができる者」としていたことが関連しているわけですが、同様の事案で企業が判断する際も、過去の就業状況にさかのぼって事実認定したうえでの判断が必要になると言えるでしょう。
ただ、仮に、就業状況に問題がなかった場合に結論が変わるのかどうかは、判断が難しいところです。 類似する事案についての判断事例として以下の例があります。
https://x.com/i/status/1637567118823620608

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