判例・裁判例コラム

派遣会社が派遣社員に競業避止義務を課すことに正当な目的はあるのか?

東京地裁R4.5.13
システムエンジニアを企業に派遣する派遣会社が、派遣社員との間で、退職後1年間、会社と取引関係にある事業者への就職、会社の客先に関係ある事業者への就職等を禁止する競業避止義務を設定する合意書を作成した
→派遣社員はその具体的作業について派遣先の指示に従うものとされており、派遣会社がシステム開発に関する独自のノウハウを持つものとはいえず、退職後の競業避止義務を定める目的・利益が明らかではない。
一方、禁じられる転職等の範囲は広範であり、その代償措置も講じられていない。
期間が1年間にとどまることを考慮しても、このような競業避止義務の合意は公序良俗に反し無効と判断

退職後の競業避止義務の設定は、期間や範囲うんぬんの問題の前に、「退職後の競業避止義務を定める目的・利益」が必要です。
例えば、顧客との関係維持のための競業避止義務の設定、企業のノウハウや機密の保持のための競業避止義務の設定といったことは、裁判例でも、「退職後の競業避止義務を定める目的・利益」として認められ得る内容です。
これに対し、ポストの裁判例は、本音ベースでいうと、派遣社員の退職の防止ということに目的があったのかなと見えてしまう内容であり、競業避止義務の範囲の問題をおいたとして、そもそも設定自体が認められない事案のように思います。

メンタル休職から復職して21か月後の秋田への転勤命令前のページ

私傷病休職の期間を会社の判断で延長できる?次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例

    東京地裁R5.11.15従業員が、会議への参加や業務の引き継ぎ等の業…

  2. 判例・裁判例コラム

    正社員は賞与5カ月、嘱託社員はゼロ →最高裁“それでも違法ではない”と判断

    最高裁H30.6.1 運送会社で正社員には基本給の5か月分の賞与を支…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    代表者からトラブルを問いただされて出勤しなくなった従業員。退職済みと扱ってよい?…
  2. 判例・裁判例コラム

    被害者名黒塗りの報告書ではパワハラ加害者を懲戒できない!東京地裁の判断
  3. 判例・裁判例コラム

    産休からの復帰に際し、週5勤務から週1勤務に変更することを提案したことが適法とさ…
  4. 判例・裁判例コラム

    労災請求における事業主証明の拒否が問題になった事案
  5. 判例・裁判例コラム

    威圧的な暴言を吐き、出勤停止処分にも従わない従業員の解雇は有効?岡山地裁の判断
PAGE TOP