判例・裁判例コラム

睡眠導入剤服用中の運転手に主治医は「復職可能」と診断!出勤認めるべき? 大阪地裁判決

大阪地裁R5.12.15
適応障害で休職していたドライバーが、「復職可能」の診断書を提出。あわせて、循環器内科の診断書も提出した。循環器内科の診断書には狭心症、慢性心不全などとあり、「日常生活程度の労作制限に限定しておくことが望ましい」などと記載があった。
ドライバーは復職を求めたが、産業医は産業医面談を行って就労不可と判断。
会社は就労を認めることができない旨をドライバーに伝え、賃金を払わなかった。
ドライバーはこれが不当だと主張して、就労不可とされた期間に支払われなかった賃金の支払いを会社に求めた。
→会社は、一般貨物自動車運送事業者として、乗務員が疾病により安全な運転ができないおそれがある状態で事業用自動車を運転することを防止すべき義務を課されている。
これを踏まえると、一定期間休業していたドライバーの復帰にあたり、主治医の診断書の確認にとどまらず、産業医による判断を経ることにより健康状態の確認を行おうとしたことは合理的かつ相当。
そして、産業医の判断は、
・ドライバーが産業医面談で「毎日ではないが睡眠導入剤を服用している、服薬を中止すると2,3日体調不良がある」と述べたこと
・睡眠導入剤の服用中は自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意する必要があるとされていること
・ドライバーの業務には夜勤業務も含まれているほか一定の積み下ろし作業も含まれていること
・心臓の血管の狭窄の程度は心筋梗塞を起こすリスクに関わるものであること
などを踏まえると、合理性を有する。
その判断を踏まえ、就労可能な状態にあることを確認できないとして、会社が就労を拒絶したことにも合理的理由がある。
よって、ドライバーが就労できなかったことにつき会社の責めに帰すべき事由はない。
賃金請求認めず。

会社は教科書的な対応ができており、裁判所の判断も妥当だと思います。
一方で、同じ事案でも、産業医がいない会社では対応が難しいと感じました。
貨物自動車運送事業輸送安全規則3条6項には、
「貨物自動車運送事業者は、乗務員等の健康状態の把握に努め、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全に運行の業務を遂行し、又はその補助をすることができないおそれがある乗務員等を事業用自動車の運行の業務に従事させてはならない。」とあります。
一方、精神科医の先生からご指摘いただきましたが、「患者の自動車運転に関する 精神科医のためのガイドライン」には、精神疾患を有する者に処方されることの多い抗精神病薬、抗うつ薬、抗 不安薬、睡眠薬、抗てんかん薬について、「副作用の出現の仕方には個人差があり、処方を受けた者全員に運転を 禁じなければならないほどの医学的根拠はない。実際にこれらの薬物の投与を受けている 者が運転に従事しており、実態にもそぐわない。処方する医師としては、薬物の開始時、 増量時などに、数日は運転を控え眠気等の様子をみながら運転を再開するよう指示する、 その後も適宜必要に応じて注意を促す、といった対応が現実的であろう。」とあります。
そうであれば、これらの薬剤を服用中であるというだけで、復職不可とすべきはなく、産業医の先生の意見を聴くことが重要になるといえます。

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