判例・裁判例コラム

主治医の「在宅勤務推奨」の診断書があれば「在宅勤務させろ」は通るのか?大阪地裁の判断

大阪地裁決定R8.2.25
抑うつ状態と診断された従業員が、「要因として、職場のストレスが大きく影響しており、通勤に対して大きいストレスを感じている」「在宅勤務を主体とした就労形態が望ましい」などと記載した主治医の診断書を会社に提出。
在宅勤務申請書を提出して、在宅での勤務を認めるように会社に求めた。
会社の在宅勤務規程では、対象者を「本人が希望し、会社が認めた者」としたうえで、「健康上の理由の場合は、主治医の診断書を持参の上、産業医面談を受診する」と定めあり。
そこで、 会社は産業医面談を予約したが、従業員は、産業医が主治医の意見をくつがえす権限はないという自らの主張を記載したメールを送信 。
会社に対する裁判手続きで在宅勤務による就労を認めることを求めた。
→在宅勤務規程で、在宅勤務は「会社が認めた者」を対象とするとしていることからすれば、労働者に在宅勤務をする権利を保障したものであると認められない。
会社の許可がない以上、従業員に在宅勤務による就労を求める権利は存在しない。
また、現時点で、産業医による面談を受診したと評価することはできず、この要件も満たしていない。
従業員は、主治医の判断が産業医の判断よりも優先されるなどと主張するが、会社の業務等に関する知識も有する専門家である産業医の意見を踏まえて在宅勤務の許否を判断することは必要かつ合理的。会社の業務等に関する直接的な知識がなく、患者からの一方的な情報によって診断等をせざるを得ない主治医の判断が産業医の判断に優先すると考えることもできない。
従業員の請求認めず。

在宅勤務規程があるんだから、在宅勤務で復職を認めてほしいという気持ちも理解できるところです。
ただ、裁判所は、この事案で「在宅勤務させろ」と請求する権利はないと判断しました。
在宅勤務規程で、対象者と承認プロセスを適切に定め、かつ承認手続きを日頃からきちんとやることが大切です。
承認手続きをちゃんとやっていない会社も見かけますが、そのようなずさんさは、ポストのような裁判の場面で結論に影響する可能性があります。 日ごろからちゃんとやるべきです。

裁判所が、産業医と主治医の役割の違いを具体的に判示しており、この点も注目されます。
「従業員は、主治医の判断が産業医の判断よりも優先されるなどと主張するが、会社の業務等に関する知識も有する専門家である産業医の意見を踏まえて在宅勤務の許否を判断することは必要かつ合理的。会社の業務等に関する直接的な知識がなく、患者からの一方的な情報によって診断等をせざるを得ない主治医の判断が産業医の判断に優先すると考えることもできない。」
他の裁判例としては、 「主治医は患者の治療を任務としており、患者の職場の実情には通じておらず、復職した場合に債務の本旨に従った労務提供が可能なのか、復職のため職場においていかなる配慮が必要なのかといった観点からの検討はしない立場にあ(る)」としたうえで、
「(会社が)主治医から診療情報の提供を受けた産業医の意見を踏まえた復職審査を必要と判断したのは相当である」と判示した例もみられます(東京地裁R6.5.28)

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