判例・裁判例コラム

上司の出社命令に「それはハラスメント」と反論 →出社拒否でも懲戒できず?東京高裁

東京高裁R8.1.12
コロナ禍で緊急事態宣言が解除された時期に、銀行の部長が、行員らに本社への出社による会議参加を指示。これに対し、行員の1人が出社を拒否し、在宅勤務のうえ、ウェブ会議での参加を希望するとメール送信。部長は、この行員に新しい役割を担わせることになっていたため、「大事な会議なので来れませんか。」とメールしたところ、行員は「大事な会議であることと、リアルに参加しなければならないこととは、全く違う話です。この状況下で出勤しなければできない特段の事情があれば、記録に残るようにメールでご教授下さい。なお、過去にも勘違いの部長が多数いましたが、『これは指示です。』とおっしゃっていただければ、人事上の立場を超えた単なるハラスメントでありますので、必ずメールにてご連絡下さい。』などと返信した。
銀行は、この出社拒否が「正当な理由なく、職務上の命令に従わないとき」の懲戒事由に当たるとして、他の事実とあわせて3営業日の出勤停止の懲戒処分を行った。行員は訴訟で懲戒の無効を主張したが、一審は懲戒処分有効と判断。労働者が控訴した。
→担当部長による業務指示は、重要な事柄を扱う会議であったこと、行員に新しい役割を担わせる予定となっており、対面で実施することが有用であると考えて出社を求めたものであるから、業務上の必要性に基づきされた指示であったと認められる。他方、1回目の緊急事態宣言が解除されてから間もない時期で、感染すれば死亡のリスクがあるとの不安が強い社会状況にあった。行員が自宅からウェブで会議に参加したいと述べることも不当であるとまではいえないこと、現に、自宅からウェブで参加し、業務に何ら悪影響を与えていないこと、部長自身、副本部長らに対し、行員の申出について、銀行の方針が5~7割出社なので仕方ないと思うなどと述べていたことからすれば、行員の上記行為は、上司の正当な業務指示に理由なく従わなかったものとまでは認められない。他の懲戒事由もないとして懲戒処分無効と判断。

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