東京地裁R4.1.31
営業成績が伸びない職員が、人事考課において4回連続で最低評価となったことから、会社は基本給を減額。さらに翌年も最低評価になったことから、再度基本給を減額した。
これに対し、職員は、「会社の給与規程では、具体的にいかなる場合にどのような基準でどれだけの賃金の減額を伴うグレードの降格が行われるか全く不明である。」などとして、減額の無効を主張した
→会社は、給与規程において、
「基本給は、グレード給と調整給をあわせたものとする」
「グレード給は、職員の職務遂行能力を勘案し、別表のグレード定義によりグレード格付を行い、これに対応するグレード給表による金額を月額として支給する」
「人事考課の結果、必要なときに降給を行うことがある」
「降格した場合のグレード給は降格したグレードのグレード給下限額とする」
「降格によってグレード給の額が変動した場合は、発令の日に属する月分の最初の計算日を基準日とし、その日から減額した金額とする」 「降格した場合のグレード給の減額が10%を超える場合には、調整給を支給する」
などと定めており、グレードの降格が実施される場合に減額されるグレード給の額は給与規程で基準日を含めて明らかにされている。 また、グレードの格付に関しても、グレード定義がされていて、相応に明確化されている。
さらに、会社は、人事制度詳細設計案を社内に周知しているところ、これに直近4回の半期考課でD以下が2回あることを降格要件とする旨記載して、内規として運用しており、その内容は、グレード定義と対比し、直近4回の考課でD以下が2回あるような場合に期待される役割も変わってくると考え得ることから、相応に合理性がある。
よって、賃金減額について就業規則に十分な根拠がある。
また、本件の事情の下では、降格が前提とした考課についても、使用者の裁量に逸脱又は濫用があったと認めることはできない。賃金減額は有効と判断。
従業員の成績不良を理由に従業員の同意なく賃金を減額するために、どのような規定を就業規則に置く必要があるかについては、
「労働者にとって最も重要な労働条件である賃金を不利益に変更するものであるところ、このような賃金減額を労働者の同意を得ることなく実施する場合、その法的根拠が就業規則にあるというためには、当該就業規則において、減額の事由、方法及び減額の幅等について、具体的かつ明確な基準が定められていることが必要」
などと判示される例が多くなっています(東京地裁R5.1.11)。
賃金は労働契約の対価ですから、その減額に関するルールに明確性が求められることは当然のことです。
就業規則が、この「減額の事由、方法及び減額の幅等について、具体的かつ明確な基準が定められている」という基準を満たしておらず、使用者が行った減額が訴訟では認められていない例は非常に多いです。
その中で、本裁判例は、おそらく上記と同様の基準を採用しつつ、就業規則に十分な規定があったとして、減額が認められており、参考になる例の1つです。
このテーマについては、以下の本でも詳しく書きましたので、お持ちの方は併せてご参照ください。
https://x.com/nobunobuno/status/2031301536182354422?s=20





