判例・裁判例コラム

人事考課のフィードバックがないのに7年連続で降級・減給! 東京地裁が無効判断!

東京地裁R2.2.26
会社が、就業規則で、「人事考課による職務等級の昇級又は降級については、社員の職務遂行能力と役割遂行状態を総合査定して行う 」と定めた。  
部長職の従業員が、担当部門の業績不振や部長としてのマネジメント能力不足等を理由に7年間にわたり、徐々に降級させられ、給与減額となった。  
部長はこの降級・減給は無効と主張
→部長について管理職として不適格であることを基礎付ける具体的な事情は指摘されていない。  
人事考課においては、評価対象者の業績のみならず、業務に対する日常的な取組みの姿勢や業務の遂行手法等の事象を幅広く対象にせざるを得ない 。しかし、そのような事象を降格・降級の主要な理由とするのであれば、少なくとも、人事考課結果のフィードバックを実施し、その理由等について評価対象者に可能な限り認識、了解させて感銘付ける必要がある。そのようなフィードバックすら実施されていない場合、そのこと自体が、降級の合理的理由の不存在を基礎付ける一事情となる。本件では、部長について、面談等による人事考課結果のフィードバックが一度も行われていないのであるから、このような点からも降級の合理的理由は否定される。  
また、部長の上長については、会社から、担当部門の業績不振についてその責任を問われたことはなかったというのであるから、部長の管理職としてのあり方に確たる問題があったと認められない以上、業績不振について部長のみの責任に帰せしめるのは相当でない。  
降級・減給に合理的理由は認められず、裁量権の濫用に当たる。  
降級・減給はともに無効と判断

人事考課に関する裁判例もさまざまで、制度設計も企業によりさまざまですが、客観的な成績や客観的事実のみを考課対象とする例は多くなく、業務への取り組みの姿勢など客観的評価になじむとはいえない項目も考課対象とされることが多いと思います。
この裁判例は、そのような考課制度自体は肯定しつつ、そのような制度のもとではフィードバックの実施がなければ、そのこと自体が、降級の合理的理由の不存在を基礎付ける一事情となるとしました。
人事考課による降級・減給がある制度を設ける場合は、日頃から評価結果をフィードバックし、その経過を書面や面談記録として残しておくことが重要です。

学校改革に反対した教員13人を懲戒処分! 裁判所「反対意見があっても従う義務がある」前のページ

正社員は賞与5カ月、嘱託社員はゼロ →最高裁“それでも違法ではない”と判断次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?

    大阪地裁R6.3.27病院の事業譲渡に伴い、全職員が譲渡日に退職し、…

  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.5.15)
  3. 判例・裁判例コラム

    勤務中の読書に対する叱責はパワハラ?東京地裁の判断

    東京地裁R5.12.7 電機製品販売会社の従業員が就業時間中…

  4. 判例・裁判例コラム

    役員としての重大な不正を理由に従業員としての退職金を不支給にできる?

    東京地裁R6.1.29学校法人において教授等を務めていた職員が大学の…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    他の従業員も宛先に入れた叱責メールの中で「言動に目に余るものを感じております」と…
  2. 判例・裁判例コラム

    「長すぎる休職制度」を見直した病院が敗訴! 裁判所が問題視した点とは?
  3. 判例・裁判例コラム

    上司の出社命令に「それはハラスメント」と反論 →出社拒否でも懲戒できず?東京高裁…
  4. 判例・裁判例コラム

    復職のために会社が指定した医師作成の証明書を要すると定める就業規則の効力について…
  5. 判例・裁判例コラム

    部下提出の日報に「『意味不明、説明せよ』連発 →裁判所『人格攻撃でパワハラ』会社…
PAGE TOP