東京地裁R8.3.19
教科書の編さん等を事業とする会社が、威圧的な暴言を理由に課長に譴責の懲戒処分。
しかし、その後も、他の従業員が口論の際に怒鳴られるなどの被害を訴えたため、この課長を自宅待機させて、弁護士が社内調査。
そのうえで、経営会議の際に「〇〇が課長になることに納得がいかない」「責任取ってもらわないと困りますよ」「これじゃ全然分かんない」「てめえ、ふざけんなよ」「てめえこの野郎」「あの野郎」などと発言したほか、10件以上の暴言・ ハラスメント行為・不適切な言動があったとして、会社はこの課長を諭旨解雇。あわせて普通解雇した。
→会社が主張する暴言・ハラスメント行為の多くが、陳述書等があるにとどまり、被害者が証人として尋問されておらず、事実を認めるに足りない。
また、法廷で被害を証言した従業員の証言内容についても、その場に居合わせた経営管理部長の供述と内容が食い違っている。
「〇〇が課長になることに納得がいかない」「責任取ってもらわないと困りますよ」と発言したとしても、その経緯、態様などが明らかでなく、直ちに懲戒事由にあたるとはいえない。
また、舌打ちをしたり、机をペンや定規等で強くたたいて大きな音を出したり、引出しや椅子を大きな音を立てて出し入れしたりしたとしても、その経緯、頻度等は必ずしも明らかでなく、直ちに懲戒事由に該当するとまでは認められない。
諭旨解雇も普通解雇も無効と判断。
地位確認請求を認容し、1500万円超の支払命令。
企業側から見たポイント
ハラスメントの被害申告が複数の従業員から寄せられたとしても、それだけで解雇が有効になるわけではありません。
本件では、会社は、多数の暴言やハラスメント行為があったとして諭旨解雇及び普通解雇を行いました。しかし、裁判所は、会社が主張する行為の多くについて、被害を申告した従業員の陳述書等があるにとどまり、本人が法廷で証言していないことなどから、事実を認めるに足りる証拠がないと判断しました。また、実際に認められた発言や行動についても、その経緯や態様、頻度等が明らかでないことなどから、懲戒事由に該当するとは認めませんでした。
解雇するのであれば、法廷に出廷する証人の確保とセットで考える必要があります。
ただし、このような場面で解雇が困難だからといって対応ができないでいると、職場環境が悪化し、離職者が増えていくおそれがあります。解雇の有効性に不安がある事案では、解雇に踏み切るのではなく、合意退職による解決を目指すことが重要です。
また、こういう事案では合意を得ることは難しいだろうと考えがちですが、実はそうではありません。合意退職による解決に向けた具体的な取り組み方は、拙著、改訂版『問題社員トラブル円満解決の実践的手法』で書きましたので、ぜひご参照ください。






