判例・裁判例コラム

試用期間中に逮捕・勾留された従業員を解雇した事案

東京地裁R5.11.16
建設会社に試用期間6か月、月給116万円の条件で雇用された従業員が試用期間中に逮捕・勾留された。従業員は、逮捕・勾留の事実を会社に告げずに、弁護士を通じて個人的事情により来週末まで休むとのみ連絡。有給休暇をすべて消化した後も5日半にわたって欠勤した。会社は勾留期間中に従業員を普通解雇。解雇後に従業員が不起訴処分により釈放され、会社は欠勤が逮捕・勾留によるものであったことを知った。
→犯罪の嫌疑による身柄拘束という高度にプライバシーにかかわる事項であるものの、欠勤する際に伝えるべきであり、個人的事情としか伝えなかった対応は不適切。会社からみれば、就労の意思すら不明であるし、無責任な人物と考えることは当然である。解雇有効と判断。

試用期間中または満了時に本採用拒否して見送る場合の注意点については以下でも解説していますので併せてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/1718.html

逮捕されて欠勤するのであればそれを会社に隠すべきではなく、弁護人を通じて事情を正しく説明すべきでした。
訴訟でも、従業員はなぜ逮捕されたかを明らかにしないまま、最終的に嫌疑不十分によって不起訴処分になったと主張しています。そのため、なぜ逮捕されたかわからずじまいですが、
裁判所は、「犯罪による身柄拘束といった高度にプライバシーに関わる事項であるものの、それを知らない被告から欠勤について事情の説明を求められるのは当然である。原告は、本件解雇後、被告に対し、欠勤の理由が本件逮捕勾留であることを伝えているものの、それであれば、欠勤する際に伝えるべきであり、本件逮捕勾留について被告に対し一切伝えないといった当時の対応は不適切であったといえる。原告は、被告において勤務を開始したばかりで被告との間の信頼関係を徐々に構築していく段階であったところ、被告に対し、欠勤の理由について個人的事情によるものとしか回答しない状態であったから、被告からすれば、原告の就労意思すら不明であるし、原告について仮に本採用をしても理由を明らかにしないで突然長期間の欠勤をする可能性がある無責任な人物と考えるのは当然である。これらによれば、原告の上記対応によって、原告と被告との間の労働契約の基礎となるべき信頼関係は毀損されたといえる。」としています。
妥当な判断だと考えます。

中古車買取店の店長が管理監督者にあたるかが問題になった事案前のページ

ジョブ型雇用における能力不足解雇次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力

    大阪地裁R7.1.27放課後デイサービスを提供する会社が就業規則で「…

  2. 判例・裁判例コラム

    「“法定休日を決めていない会社”は35%払わなくていい?」東京地裁の結論!

    東京地裁R5.12.7 従業員が休日出勤した際の割増賃金が支払われて…

  3. 判例・裁判例コラム

    懲戒解雇の通知後に行った予備的普通解雇が無効とされた事案

    東京地裁R3.6.25職務怠慢やハラスメントを理由に従業員を懲戒解雇…

  4. 判例・裁判例コラム

    休職について説明したにすぎず休職を命じていないとされた事例

    大阪地裁H25.1.18バス会社の従業員が通勤中の交通事故で負傷し、…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    1月19日に最高裁で弁論!雇用契約書に「有期雇用契約社員就業規則を適用する」とあ…
  2. 判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例②
  3. 判例・裁判例コラム

    院内携帯を持たされていた医師! 食事・仮眠も「全部労働時間」!東京地裁の判断!
  4. 判例・裁判例コラム

    シフト制従業員とのシフト決定のやりとりの失敗が会社敗訴の原因に!東京地裁の判断
  5. 判例・裁判例コラム

    母親の危篤で勤務開始日の延期を求めた入社予定者!会社は延期要請を拒否。東京地裁の…
PAGE TOP