判例・裁判例コラム

仕事がないから自宅待機を指示。賃金6割でよい?福岡地裁の判断

福岡地裁R5.6.28
従業員十数名の保険代理店が規模縮小を理由に従業員を整理解雇。しかし、訴訟を起こされて解雇無効の判決が確定。会社は訴訟を起こした従業員にバックペイを支払ったうえで、仕事がないので担当業務を検討する期間中、自宅待機するように指示。しかし、自宅待機中の賃金として6割のみ払えばよいか全額払う義務があるかをめぐって再度紛争化した。会社は賃金規程に「休業1日につき平均賃金の60%以上の手当を支払う」とあるから、6割のみでよいと主張
→本件自宅待機命令は自宅待機を具体的な労務として特定する業務命令と解すべき。よって、会社は全額の賃料支払義務を負う。また、仮に業務命令でないとしても、会社の都合により就労を拒否しているのだから、民法536条2項により全額の賃料支払義務を負う。会社規模から担当職務を定めることが事実上困難だったとしても、解雇は無効なのであるから、従業員を就労させないことについて会社に帰責性がないとは到底いえないと判断。

仕事がないから整理解雇したら整理解雇の訴訟で負け、仕方ないので自宅待機を命じたら、自宅待機中の賃金でまた負けたダブルパンチの事案です。
自宅待機命令を出すと、本件のように、自宅待機を具体的な労務として特定する業務命令と解すべきとして賃金全額の支払いを命じられる例が増えています。仕事がないなら自宅待機命令ではなく休業命令を出すべきでした。そのうえで、そのような場面における賃金について民法536条2項の適用を排除する規定を就業規則に置くべきでした。
なお、本件は控訴され、控訴審ではさらに、自宅待機命令が1年にも及んでおり、1年を超えた日以降の自宅待機は業務上の必要性を欠く違法なものだとして、会社はさらに賠償を命じられることになりました。。なかなかつらい事案で心配になります。
最初の段階で適切な人に相談して整理解雇ではなく円満解決しておけばそれで済んだはずですが、一度対応を誤ると、とことん、、という感じがします。

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