判例・裁判例コラム

退職勧奨を拒否した従業員にのみ在宅勤務を認めず、在宅勤務用パソコンを返却させたことは不法行為?

東京地裁R5.10.25
事務作業を担当する従業員について、業務の遂行に積極的でない、チームの一員として働くことができない、時間内に効率的かつ迅速な事務処理を行っていないなどの問題があり、これらの点について具体的に指摘されたにもかかわらず改善できなかったため、退職勧奨。しかし、従業員が退職に応じなかったため、オフィスアシスタントに配置換えした。配置換え後は、入社の約8か月後から行っていたローテーション勤務(スタッフを複数班に編成し、出社と在宅勤務を交代で行うもの)をこの従業員にのみ認めず、すべての所定労働日に出社するように求めるとともに在宅勤務用に貸与していたパソコンを返却させた。
→配置換え後にオフィスアシスタントとして命じられた業務には、〔1〕インターフォンによる訪問者の出迎え、会議室等への案内、〔2〕運送業者と書類、物品の受発信を行う、〔3〕配達された郵便物の管理、郵便物の到着をスタッフに知らせるなどの業務が含まれていた。これらの業務の内容からすると、事務所に出勤して行う業務が多かったと認められるから、この従業員のみにすべての所定労働日を出社するよう命じ、在宅勤務用のパソコンを返却させたとしても、差別的に取り扱ったとまではいえず、不法行為を構成するとはいえないと判断。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

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