判例・裁判例コラム

リハビリ勤務の規定をおけばリハビリ勤務を認める義務がある?

大阪地裁H26.7.18
会社が双極性障害等で3回目の休職をしていた休職者について、復職願提出後もリハビリ勤務をさせないまま、休職期間満了により雇用を終了した。休職者は復職可能であり雇用契約は終了していないとして、会社に対して訴訟提起
→会社は、リハビリ勤務規程を設けて、「リハビリ勤務は、私傷病による長期欠勤又は休職からの復職前に、短時間等での勤務を行い、段階的に業務に慣れさせることで疾病の再発を予防しつつ、円滑な復職を支援することを目的とする」「リハビリ勤務について、①私傷病による欠勤・休職の期間が通算して1か月以上の者、②復職する意思を持っている者、③主治医が復職可能と診断している者、④産業医が復職可否を判定するに当たり、復職前に短時間勤務等の業務負荷を調整した勤務が必要と判断する者、⑤所属長・人事勤労部署がリハビリ勤務の適用を可能と認める者の全てに該当する者を対象とする」と定めている。会社はこのような規程を制定しているから、規程におけるリハビリ勤務の要件を満たしている場合には会社は休職者にリハビリ勤務を行わせなければならず、リハビリ勤務を実施すれば、その実施期間内に復職可能になったと認められる場合には、会社がリハビリ勤務を実施せずに、休職期間の満了による雇用契約の終了を主張することは許されない。
 この点、本件では、産業医が休職者の躁状態を再発させないため、リハビリ勤務開始について、職場に休職者を管理できる適切な上司が存在することを条件としていた。そこで、会社の人事総務部担当者らは、上記条件を踏まえて、複数の支店に対してリハビリ勤務の受入れを求めて相当程度の努力をしたものの、以前の休職者の異常行動等を理由に受入れに対する拒否感が強く、強制的に受け入れさせても休職者にストレスが生じて躁状態が再発するおそれがあった。また、適切に休職者を管理することができる上司が存在しなかった。そのため、休職者のリハビリ勤務先を確保することができず、リハビリ勤務を実施させることはできないと判断した人事総務部担当者らの判断が不合理とはいえない。休職者は、リハビリ規程におけるリハビリ勤務対象者の条件である「所属長・人事勤労部署がリハビリ勤務の適用を可能と認める者」にはあたらないから、会社はリハビリ勤務を実施させるべき義務を負っていたとは認められず、休職期間満了により雇用契約は終了したと判断

就業規則に定められた定年延長手続をしないまま、定年後も勤務を続けさせた場合の判断事例前のページ

抑うつ状態で1年近く出勤しない職員の解雇が、仮に就業できない状態であったとしても無効であるとされた事例次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    セミナー「ジョブ型雇用の就業規則の作り方とジョブ型雇用の裁判例」開催のお知らせ

    企業がジョブ型雇用に取り組む場合、どのような就業規則を整備すればよい…

  2. 判例・裁判例コラム

    職種限定合意がある従業員に対する配転命令

    最高裁R6.4.26社会福祉法人が福祉用具の改造・製作を行う技術者を…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    有期雇用の従業員との退職合意
  2. 判例・裁判例コラム

    従業員に周知された資料に基づき、降格にともなう賃金減額を行った事案
  3. 判例・裁判例コラム

    能力主義的賃金制度導入の失敗例
  4. 判例・裁判例コラム

    就業規則の変更によっては変更されない労働条件の合意
  5. 判例・裁判例コラム

    どのくらいの時間数の副業なら本業に支障を生じさせると認められる?
PAGE TOP