判例・裁判例コラム

PIP実施方法の問題点が指摘され、解雇が無効とされた事例

東京地裁R6.3.18

前職でデジタルマーケティングを約7年担当した経歴のある労働者を採用したが、能力不足と評価して業務改善計画(PIP)を実施。実施後も改善がされないため、退職勧奨したが、応じなかったため、普通解雇
→従業員の就労状況を踏まえるとPIPを実施したことは相当。
 しかし、より踏み込んだ指導や教育をほどこす余地はあった。一例を挙げれば部長はPIP期間において単なる数字の報告にとどまらない「分析」を求めたが、従業員は求められる「分析」がいかなるものかを理解できないまま、「分析」とはいえないコメントを付けることを繰り返していた。また、PIP実施の過程で上長との面談等がどの程度行われ、会社が求める業務改善の具体的内容について従業員に共有されていたのか、従業員の取り組みについてどのようなフィードバッグがされていたのか等の詳細が証拠上明らかでない。
 経験者として採用され、年収960万円と給与水準はそれなりに高いが、管理職でない一担当者にすぎず、入社から1年半程度しか経過していない。指導、教育が十分に行われた事実が認められず、解雇は無効であると判断

雑に作成された退職時の秘密保持誓約書が無効と判断された例前のページ

講師の賃金について「1授業(50分)時間当たり:2310円」と定め、授業準備やテスト採点について別途賃金を払わないことは違法?次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    派遣会社が派遣社員に競業避止義務を課すことに正当な目的はあるのか?

    東京地裁R4.5.13システムエンジニアを企業に派遣する派遣会社が、…

  2. 判例・裁判例コラム

    始業前の制服への着替え時間が労働時間にあたることが否定された事例

    東京地裁R5.4.14ビルにおいて設備機器の操作・保守を行う設備員が…

  3. 判例・裁判例コラム

    会社はどこまで注意喚起すれば安全配慮義務を果たしたといえる?

    福井地裁R3.5.11従業員が工場で使用していた発がん性の薬剤が原因…

  4. 判例・裁判例コラム

    退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力

    大阪地裁R7.1.27放課後デイサービスを提供する会社が就業規則で「…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    公益通報の9か月後にされた配転命令は適法か?
  2. 判例・裁判例コラム

    引越し会社で特定の作業をこなした場合に支給される業績給は労基法施行規則19条6号…
  3. 判例・裁判例コラム

    パワハラ加害者による調査協力拒否、調査妨害を理由とする普通解雇の有効性
  4. 判例・裁判例コラム

    就業規則に定められた定年延長手続をしないまま、定年後も勤務を続けさせた場合の判断…
  5. 判例・裁判例コラム

    自分自身が納得することを最優先し、会社業務への支障を生じさせる従業員の解雇
PAGE TOP