判例・裁判例コラム

休職満了後も復職審査継続。 “さかのぼり自然退職”が認められた判決

東京地裁R6.5.28
休職者が復職を希望したため、会社は復職審査のために、主治医から診療情報提供を受けるための同意書の提出を求めた。
しかし、休職者が提出しないまま、令和元年11月30日の休職期間満了日を経過した。
会社は休職期間満了後も、資格喪失手続をせず引き続き休職者に同意書の提出を求め、社会保険料の負担も求めるなどしたが、その後も休職者から同意書は得られずに紛争化。
会社は翌年4月になって本来の休職満了日である令和元年11月30日付での自然退職・雇用終了を通知した。休職者は、雇用契約上の地位の確認を求めて訴訟提起
→会社が休職期間満了の効果が生じた後も、資格喪失の手続をとることなく復職審査を継続し、復職可能と判断する場合に、あえて自然退職の効力を主張せず復職を認めること、逆に復職可能との判断に至らなければ、復職審査を打ち切り、休職期間満了日に遡って雇用契約の終了を主張することは、いずれも恩恵的措置として妨げられない。
就労可能であることが立証されていたとはいえず、令和元年11月30日をもって自然退職により雇用は終了したと判断

休職期間満了を理由に従業員を退職扱いや解雇する際の注意点を以下の記事でも解説しております。あわせてご覧いただけますと幸いです。
https://kigyobengo.com/media/useful/465.html

「休職期間満了までに復職審査が終わらない」
そんなときの対応として参考になり得る判断が示されています。
休職期間満了までに復職審査が終わらない場合は、
休職期間を延長して復職審査をすることが通常だと思いますが、延長せずにそのまま復職審査を続けるという方法もあるということになります (復職審査が間に合わないから復職不可としてしまうとか、逆に審査せずに復職を認めてしまうのはです)。
理論的には、私傷病休職に関する就業規則の規定例には、
・休職期間満了までに復職できないときは解雇するという規定例と、
・休職期間満了までに復職できないときは自然退職となるという規定例
があります。 復職可否について訴訟になればどちらの規定例でも大差ないことがほとんどですが、大きな違いは、後者の規定例は解雇ではないため、通知がいらないという点です。
ポストの裁判例が、「会社が休職期間満了の効果が生じた後も、資格喪失の手続をとることなく復職審査を継続し、復職可能と判断する場合に、あえて自然退職の効力を主張せず復職を認めること、逆に復職可能との判断に至らなければ、復職審査を打ち切り、休職期間満了日に遡って雇用契約の終了を主張することは、いずれも恩恵的措置として妨げられない。」としたのもこの点を踏まえたものだと考えられます。

復職審査における産業医と主治医の役割前のページ

雑に作成された退職時の秘密保持誓約書が無効と判断された例次のページ

ピックアップ記事

  1. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    懲戒処分としての降格に伴い基本給、役付手当を減額することは有効か?

    東京高裁R3.6.23タイムカードを改ざんした部長を懲戒処分として次…

  2. 判例・裁判例コラム

    運転手に支給する無事故報奨金は割増賃金の算定基礎に含める必要がある?

    大阪地裁R6.9.13業務用スーパーで配送業務に従事する運転手に会社…

  3. 判例・裁判例コラム

    定年後再雇用をめぐる退職勧奨の問題事例?東京地裁の結論!

    東京地裁R7.5.30ゴルフ場の運営会社の部長が60歳の定年前に定年…

  4. 判例・裁判例コラム

    調剤薬局で患者の感情を害する言動をする薬剤師を解雇した事案

    大阪地裁R6.2.22調剤薬局が経験者の薬剤師を採用。履歴書には「前…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    レジ金横領を理由とする解雇
  2. 判例・裁判例コラム

    賃金規程に基づいてした給与等級引き下げの効力について判断された事例
  3. 判例・裁判例コラム

    住民票記載事項証明書の不提出を理由とする解雇の有効性
  4. 判例・裁判例コラム

    営業活動に他の業者を帯同させた営業社員が減給処分!処分は有効?東京高裁の判断
  5. 判例・裁判例コラム

    高額な歩合給制度の問題点
PAGE TOP