判例・裁判例コラム

業務命令に応じない従業員への対応事例②

東京高裁H14.9.30
上司の業務上の指示に従わない女性社員に対し、4回のけん責処分の後、普通解雇。一審の東京地裁は、「不服従は上司と部下との意見の対立や行き違いを原因とするものにすぎず、重大な問題とまではいい難い」「解雇前にけん責より重い減給、出勤停止等の処分をしていない」等として、解雇は無効と判断。会社が控訴した。
→業務上の指示に対する不服従は、一つ一つ取り上げると比較的些細なものが多いように思われるが、企業全体として統一的・継続的な事務処理が要求される事柄について、女性社員は独自の見解で合理的であると考えて上司の指示に従わず自己の事務処理方針を変えないという態度が顕著である。会社の事務の進行に支障をもたらすものである上、職場全体の秩序、人間関係に悪影響を及ぼすものである。会社はけん責処分にあたり弁明の機会も与えており、女性社員が4回にわたるけん責処分を受けたが、それでも態度を改めなかったために解雇したものであり、解雇有効と判断。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…

関連記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大阪地裁R6.3.27)
  2. 判例・裁判例コラム

    覚醒剤使用で懲戒解雇された従業員の退職金不支給についての判断事例

    東京地裁R5.12.19鉄道会社が覚醒剤使用で有罪判決を受けた車両検…

  3. 判例・裁判例コラム

    半期ごとの業績評価により賃金を最大2割減額する規定の効力

    東京地裁R6.8.8半期(4〜9月、10月〜3月)ごとに成績…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    役職手当を固定残業代と定める規定の有効性
  2. 判例・裁判例コラム

    入社後約4年間にわたり「残業手当」の名目で支給していた賃金が時間外労働の対価とは…
  3. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用における能力不足解雇
  4. 判例・裁判例コラム

    労災請求における事業主証明の拒否が問題になった事案
  5. 判例・裁判例コラム

    訴訟をすれば有給休暇の時効がとまる?
PAGE TOP