東京地裁R2.9.28
産業用機械の制作、販売等の事業を営む会社が、20代前半の大卒男性を採用。
しかし、新人研修に参加した際、研修の外部講師に対して、「何故この項目を学ぶ必要があるのか」、「やりたくないので、やらなくていいですか」、「それって強制はできないですよね」と述べた。営業マナーの研修中も「こんなことをして営業はお客さんをだますのですよね」などと発言。生産部組立研修での作業がうまくいかないときには、突然大きな声を出して工具を放り投げ、担当社員から注意を受けた。事業部に配属後も先輩社員から、太陽光発電の取得費用を軽減するための情報を調べて報告するよう求められ、「ネットを検索すると該当ページが出てくるのでそこを見てください」、「自分で調べた方が早いと思います」などと述べた。上司からは、「基礎的事項を習得できず、上司や先輩社員の指導に従わず、内向的なところがあって相手の意図をくみ取ることが不得意で、相手を論破するような話法を多用することから、営業に向かず、少なくとも太陽光発電事業部にて業務を行うことは難しい」との評価を受けた。会社は、この従業員について試用期間を3回延長した後、能力不足や他の従業員への悪影響を理由に解雇
→作業がうまくいかない場面で工具を放り投げていて、集中力や説明を聴きとって理解することに問題があった可能性が考えられるが、5日間にわたる生産部組立研修におけるものであるから、その評価については他の事情と併せて解雇事由に当たるか慎重に検討すべきである。また、社会人経験がなかった従業員が入社後間もない研修等で学習に消極的な発言などがあったとしても、その評価については他の事情と併せて解雇事由に当たるか慎重に検討すべきである。会社は、試用期間延長後、会議室にこの従業員一人を置いて専ら簿記の自習や新聞記事の閲読・報告等をさせており、適切な指導を実施して改善されるか否かを検討したと認めるに足りる証拠がない。退職勧奨に力を入れて、従業員の問題を改善させることと相容れない対応をしていた。解雇無効と判断。